IT部門のリーダーに求められる条件は以前と大きく異なる。業務改革の先導役となりグローバルに活動する新たなリーダーを従来型のOJTだけで育成するのは難しい。10年後の“主役”をどのように組織的に育成するか。IT部門の新たな取り組みが始まった。

 「それでは意図が伝わらない。もっと具体性を交えて説明してみろ」。会議室から厳しく指導する声が漏れる。

 声の主は、住友生命保険の岸和良 情報システム部ITプロジェクト推進室長。情報システム部内で月1~2回の割合で実施している、マネジメントに関する特別研修の風景だ(写真1)。

写真1●住友生命保険 情報システム部が実施している特別研修の様子と、利用するチェックリストの一部
写真1●住友生命保険 情報システム部が実施している特別研修の様子と、利用するチェックリストの一部
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 岸室長が指導しているのは30代の部員。鬼教官さながら指南役を務める。2011年6月下旬の取材当日は部員3人に今後の基幹システムのあり方を自由に議論させ、その中で説明力や企画力を教えていた。

 住友生命の取り組みは特別研修に終わらない。4月に、社外も巻き込み新たな活動を始めた。「10年後人材研究会」である。

「10年後人材」の育成目指す

 10年後人材研究会では、「10年後に現場で意思決定する立場にある」人材の育成を目指す。メンバーは岸室長を筆頭に、30代の情報システム部員7人で構成。現状では、対象者は特別研修と同じである。

 違いは、外部を意識した活動に発展させたことだ。まず、社内メンバーだけでなく、社外のIT関係者を交えた勉強会を定期的に実施する。現在は月1回の頻度で開いている。

 さらに、日々実践している研修の内容を基に、住友生命以外の会社でも利用できる方法論を確立する。この方法論を、会社を超えて共同で改善していく活動につなげることを研究会の目標とする。

 住友生命が部員のスキルアップのために独自に作成し利用しているチェックリストを基に、各社が利用できる研修の方法論を作って共有する、というのが一例だ。チェックリストは企画力の強化を目指したもので、「案件が本当に必要か、ないと何が問題かを検証し、本質を発見する」などの項目で構成する(写真1右)。

 このチェックリストを使って、例えば定期的に自己診断して結果を5段階でグラフ化し、「自分はどんな能力が足りないのか」「どこを今後重点的に強化すべきか」などを一目で把握できるようにしていく計画だ。