Windows 7への移行作業を進めるとき、「今あるデスクトップ環境をそのまま再現する」ということを最優先に考えがちだ。先に紹介したXPモードやアプリケーション仮想化を駆使し、いかに既存アプリケーションを移すかばかりを気にしてしまう、というわけだ。実は、これが大きな間違いだという。

 「移行作業に入る前に、まず“移行しない”アプリケーションを決めるのが先。取捨選択した上で移行しないと、無駄な費用と労力をかけることになる」。オージス総研でWindows 7移行サービスを手掛けた三木 太志氏(ソリューション開発本部 エネルギーソリューション第一部 テクニカルサービスチーム)はこう話す。

 多くの企業でXPへの移行以来、10年程度の時間が経過している。このため、本来不要なクライアント/サーバーシステムなどが氾濫しているという。それらを整理しないまま、Windows 7への移行を進めることは得策ではない。

 オージス総研が勧めるWindows 7への移行方法では、初めにアプリケーションの棚卸しを実施する。その上で移行する必要があるかどうかを判断する。つまり、“捨てるシステム”を決めてから、移行作業に入るというわけである。

 捨てるシステムを見極めるための調査項目は、主に「利用者数」「利用頻度」「開発言語」の3点だという。アンケート調査やシステムログの分析とともに、利用部門へのヒアリングも実施する。ヒアリングを実施することで、本当は不要なアプリケーションが分かる。

 「無駄なアプリケーションを減らすほど、Windows 7への移行が楽になる」(三木氏)。

 ただしたとえ年に1回しか使わなくても、必要なアプリケーションは残さなければならない。例えば、年次決算の処理に使うアプリケーションなどだ。

 このほか、同じ機能を持つアプリケーションがあれば、どちらか一方に統合して、移行するアプリケーションの本数を減らす手もある。結果として全社のアプリケーションの本数を減らせれば、保守コストの削減にもつながる。OSのバージョンアップはアプリケーションの棚卸しのチャンスと捉えたい。