Windowsをバージョンアップする際、クライアントPCに格納してあるデータも引き継がなければならない。移行するデータの中で、問題になりがちなのがメールのデータだ。メールのデータが数Gバイトに及ぶユーザーがいることも珍しくない。データ量が多いと、移行が事実上不可能になるケースもある。

 化学大手の東ソーでは、メールソフトの移行で問題が発生した。XPからWindows 7への移行について、システム部門が検証しているときにこの問題が判明した。同社は、OSの移行に伴って社内標準のメールソフトをOutlook ExpressからWindows Live メールに変えようとした。OSに標準で付属しているソフトがWindows Live メールに変更になったためである。

 「どちらもMicrosoft製品なので、移行は簡単だと思っていた」と、東ソー情報システムの滝 計貴氏(システムサービス事業部長)は言う。しかし、そこに落とし穴があった。実際にデータの移行作業を進めると、まったく終わる気配を見せない。結局20時間以上かかってもデータ移行が終わらず、検証を打ち切った。

 滝氏は「データ変換の処理に時間がかかっているようだった」と振り返る。データ変換に時間がかかったのは、移行するデータ量が多かったため。同社では、クライアントPCのローカルディスクにメールのデータを蓄積する、POP方式を採用している。検証に使ったクライアントPCには、数Gバイトのメールデータが格納されていた。

 「このままでは、メールソフトの移行だけで、PCが1日使えなくなる」。こう考えた滝氏らは、ITベンダーに助言を求めたが有効な解決策は得られなかった。そこで発想を転換し、メールソフトを切り替えることにした。試しにオープンソースソフトの「Thunderbird」を検証すると、5~6時間でデータ移行が終わった。「Thunderbirdは、データ変換処理のチューニングが進んでいるようだ」と滝氏。ユーザー教育が必要になるのはWindows Live メールでもThunderbirdでも同じだと考え、社内標準のメールソフトをThunderbirdに変更した。