2011年に、健康志向のスマートフォンユーザーに話題になったのが、「UP」というリストバンド型センサーだ。米Jawboneが開発したもので、スマートフォンのアプリ向けBluetooth経由で接続、歩数や睡眠状態などの生活習慣を記録する。スマートフォン向けアプリは無料で配布、その代わりリストバンドを99.99ドルで販売し、収益を上げるモデルである。

 同じようなビジネスモデルは、過去にもジョギング情報を取得する「NIKE+」があった。2012年には、こうした外部機器と連携したスマートフォン向けアプリやサービスが増えていきそうだ。

競争が厳しくなったアプリ開発

タブレット端末で操作できる巨大迷路。台の上の人がタブレット端末を傾けると、それと同じように迷路が傾く
タブレットで操作できる巨大迷路。台の上の人がタブレットを傾けると、同じように迷路が傾く
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 アプリ開発者の一部は、外部機器との連携サービスに注目し始めた。

 グーグルが2011年10月に横浜で開催したGoogle Developer Day 2011でも、天体望遠鏡や楽器などと連携する応用例が多数展示された。アプリによって商品そのものの価値を上げるもの、アプリとの組み合わせによって新しい使い方を提案するものなど、狙いは様々だ。

 外部機器連携に注目が集まる背景の一つには、アプリの数が増え、同じジャンルでの競争が激しくなったことで、アプリ単体では注目を集めるのが難しくなったという事情がある。グーグルによると、登録アプリの数は2012年初頭時点で40万に達したとされている。ダウンロード数も増え続けているとはいえ、膨大なアプリの中から目的のアプリ、好みのアプリを見つけ出すのは非常に難しい。しかも、Androidでは無料アプリが3分の2を占めているとされており、有料版で収益を上げるハードルはとても高い。

 そこで出てきたのが、UPやNIKE+のように「ハードをアプリとセットで売って収益を得るモデル」というわけである。

「O2O」「リアルサイバー連携」がキーワードに

 こうした外部機器連携を含めて、2011年にはネット上の情報サービスを実店舗の売り上げにつなげる「O2O」(オンライン・ツー・オフライン)や、ネット上の情報と実社会が緊密につながった世界「サイバー-フィジカル・システムズ」(サイバーフィジックス、フィジカルコンピューティングなどとも呼ばれる)といったキーワードが使われ始めた。

開発基盤となるNFCやADK

 こうしたネットとリアルをつなぐ連携サービスのための共通プラットフォームも広がりつつある。

 日本の「おサイフケータイ」の国際版とも言えるNFC(Near Field Communication)は、決済だけでなく、カジュアルなコミュニケーション手段としてもグローバル市場で広く使われる可能性がある。NFC対応端末はまだ多くないが、一部の開発者はその可能性に注目、NFCを使った「タッチ」を起点としてサーバーから情報を呼び出すようなアプリなどを開発している。

 例えば、Android Application Award 2010-11 Winterの「アーリーアダプター賞」を受賞した「taglet」は、Webとリアルワールドをスマートフォンを介して結びつける。スマートフォンをNFCタグにかざすだけで、特定のURLのWebサイトを表示するなど所望の動作をさせる。NFCタグとしては、FeliCaを内蔵したICカード(SuicaやPASMOなど)を使うことができる。米エバーノートの開発者イベントで最優秀賞を獲得したアプリも、スマートフォンのNFC機能を使ったものだった。

 このほかグーグルは、2011年5月に米国サンフランシスコで開催した開発者会議「Google I/O」で、Android端末向け周辺機器を自由に開発できる「Android Open Accessory」を発表した。周辺機器を開発するための開発キット「Accesorry Development Kit(ADK)」を、日本のロボット開発企業であるアールティなどが提供する。Google I/Oでは、ADKを活用してアールティがロボット、ブリリアントサービスが植物工場を展示するなど、この分野での存在感を見せた。