日産自動車は2011年12月、全世界の販売店(ディーラー)向けシステムの刷新に着手した。接客や販売、顧客情報の管理、定期点検や修理の受付といった、販売店の業務全般を支援する。新システムの開発には、米マイクロソフトのCRM(顧客関係管理)ソフト「Dynamics CRM」とクラウド基盤サービス「Windows Azure」を全面採用する()。

図●日産自動車が開発する次期販売店向けシステムの概要
図●日産自動車が開発する次期販売店向けシステムの概要
写真は開発を発表する2011年12月12日の記者会見の様子。CIOである行徳セルソ執行役員(写真左端)が出席した

 業務分析などを経て2012年末から1年がかりで国内の拠点に導入し、その後は中国やインドなど新興国を中心に海外の拠点へも展開する。日産のCIO(最高情報責任者)を務める行徳セルソ執行役員グローバル情報システム本部長は2011年12月12日に開催したシステム刷新の発表会見の席で、「自社開発に比べてシステム運用費を15~20%削減できる」と説明した。

 日産が目指すのはシステムのコスト削減だけではない。真の狙いは、販売店における顧客対応業務の強化にある。販売やアフターサポートといった業務プロセスの改善と連携強化、販売店間での顧客情報の共有などを通じて、顧客対応にかかわる業務全般を改革する。「日本流の『おもてなし』を世界の販売店へ広げる」。行徳執行役員は、業務改革のゴールをこう表現する。

 業務改革を支えるのが新システムだ。新システムによって、顧客が来店した時点で、営業担当者やサポート担当者が顧客の情報を把握できるようにする。営業現場の最前線で働く従業員が接客に集中できる環境を作った上で、業務改革を実行する。

 システム刷新と業務改革は、日産が6月に発表した中期経営計画「日産パワー88」に基づく取り組みだ。目を引くのは、自動車メーカーが社内の情報システムの刷新計画を記者会見という形で明らかにしたことと、それをCIOが自ら発表したことである。販売店の顧客対応業務は、自動車メーカーの競争力に直結する。日産の取り組みは、業務改革や本業強化をIT部門が主導するという時代の流れを象徴する。