震災以前、日本のスマートグリッドは、ソーラーパネルと電気自動車(EV:Electric Vehicle)に代表されていた。電力安定供給への不安が高まる震災後も、EVに対する期待や興味は衰えていないようだ。ガソリンで走行する自動車でもICT(情報通信技術)によりハイテク化されたものは多いが、電気自動車においてはICTの出番はさらに増えることになる。

 Tesla Motorsが新たに発売するModel S(写真1)には、インターネット接続が基本機能として搭載されている。このような機能があれば、EVの位置や自動車の状態などの情報をネットを通じて発信することが可能になる。

写真1●2012年半ばに発売予定のTesla Model S(写真:戸島大介氏提供)
写真1●2012年半ばに発売予定のTesla Model S(写真:戸島大介氏提供)
インターネット接続が可能で、基本モデルの価格は定価の4万9900ドル。連邦政府補助金7500ドルに加え、カリフォルニア州では2500ドルのリベートの現金を受け取ることができるので、実質3万9900ドルで購入できる。基本モデルの走行距離は160マイル(257km)。ほかに走行距離230マイル(370km)版(5万9000ドル)、同300マイル(480km)版(6万9900ドル)もある。

 そのデータは、スマートフォーンから発せられるデータやビルや工場のセンサーから集められるデータなどとともに、いわゆる“ビッグデータ”を形成するようになる(図1)。そして、別個に収集されたデータは融合・解析され、さらに有益なデータや情報に変換されてEVを含む様々な分野に応用されるようになると予想される。

図1●ビッグデータのデータソース
図1●ビッグデータのデータソース

 EVはICTと電力の接点にある。そう考えれば、EV市場がICT業界にとってチャンスであることは間違いない。各国の自動車メーカーはEVの分野で後れを取るまいと、市場では競争が激化しつつある。今後、EVの価格はどんどん下落していくだろう。これまでEVの分野で高い技術力を誇ってきた日本メーカーも、これからは価格と付加価値で競争しなければならなくなる。競争を支えるのはICT技術であり、その技術者である。