IFRS(国際会計基準)の適用は当初の見込みよりも2年以上延びる公算が大きい。この2年の余裕をどう捉えるべきか。IFRSへの取り組みを法制度対応に限定せず、中長期的に経営課題を解決するための活動に結び付ける姿勢が大切になる。その際に情報システム部門が果たす役割は大きい。

継続的な情報収集も必要

 12年は11年と同様に、金融庁の動向をはじめとするIFRSを取り巻く状況が変わりそうだ。プロジェクトの目的を中長期的な経営課題の解決に据えた場合でも、IFRSそのものの動向について継続的な情報収集が欠かせない。

 金融庁は12年をメドに強制適用の方針を決めるとして、企業会計審議会総会・企画調整部会の合同会議を1カ月に1回のペースで開催している。だが合同会議の議論の進捗は遅く、参加する委員からは「12年にこだわらずにじっくり決めるべき」との意見も出ている。今後の見通しは不透明であり、合同会議の議論の内容を押さえておくことが望ましい。

 IFRSと日本の会計基準を近づける取り組みであるコンバージェンスについても、先行きが見えにくい。大臣発言を受け、これまで示されていたコンバージェンスの計画が非公表になった。資産除去債務、包括利益などコンバージェンスの影響は大きいので、こちらも注意が必要だ。

 海外の動向では、IFRSの大きな改訂が日本企業に影響する可能性が高い。米国の決定も日本での議論に影響を与え得る。11年中としていた米国の強制適用の決定は12年に延びる見込みだ。

 IFRSをめぐる状況は流動的で、「金融庁の方針が決まるまで待つ」という態度を採る企業もある。だが、グローバルな企業間競争がより激しくなるなか、IFRS適用延期を経営課題に取り組む好機とみなす態度が重要になるのは間違いない。ITを生かし、いかに効果的に経営課題を解決するかを考える姿勢が、システム部門に求められている。