NECと富士通の株価が冴えない。NECの2011年12月20日の終値は155円と、2011年1月4日終値と比べ38%下落した。富士通は同399円で30%の下落である。日経平均株価は同期間で20%値下がりしたが、両社の株価の下落率はそれより大きい()。

図●国内大手IT4社の2011年の株価推移
図●国内大手IT4社の2011年の株価推移

 時価総額もNECは4037億円にまで落ち込んだ。単純比較は難しいが、SNS大手のグリーの時価総額は過去1年で倍増し5920億円に達した。勢いの違いは明白だ。

 ドイツ証券の菊池悟アナリストはNECと富士通について「マクロ経済の影響を強く受けた」と語る。3月に発生した東日本大震災だけでなく、年後半に入ってもタイの洪水や欧州の債務危機、超円高の継続など悪材料が相次いだ。それにより、国内IT投資の回復が想定以上に遅れた。こうした外部要因が、両社の株価に織り込まれているのは間違いない。

 だが、外部要因だけに低迷の理由を求められないのも事実だ。

 例えば日立製作所。売上高に占める社会インフラ事業の比率が高いとはいえ、株価は年間で約1割しか下落していない。国内SIサービスに軸足を置くNTTデータの株価推移は、IT投資の低迷にもかかわらず、日経平均を上回った。震災後、日立とNTTデータは一時、年初の水準まで株価を戻したのに対し、富士通とNECは弱含みで推移した。

 ある証券アナリストは「株価の低迷は、NECと富士通の戦略から成長ストーリーが見えないことの裏返しだ」と話す。例えば両社が注力するクラウド事業は、「現時点では利益に貢献しておらず、むしろ将来に対する懸念の方が大きい」(同)。海外展開についても、市場の評価は厳しい。別の証券アナリストは「NECは大きく出遅れており、富士通は海外売上高に占める欧州の比率が高いため不安要素が多い」と指摘する。

 「スピード感のある具体的な成長戦略を示さないと、株式市場は反応しない。外部要因に左右されない体質を作ることが急務だ」とドイツ証券の菊池氏は語る。2012年、株式市場はNECと富士通の「次の一手」を催促する。