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 続いてディスプレイ部分の分解を試みる。有機ELパネルは、前面の筐体に貼り付いているようで、取り外すのは大変そうだ(図1)。ディスプレイのベゼル周辺にある、わずかな隙間にマイナス・ドライバーを差し込んで、はがすのが、手っ取り早いのではないか(図2)。そう考え、その隙間にドライバーの先端を差し入れて、前面筐体に貼り付けられている有機ELパネル・モジュールをゆっくりと引きはがしていく。

図1 有機ELパネル・モジュールが取り付けられている前面の筐体
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図2 ディスプレイのベゼル周辺にはわずかな隙間がある
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図3 二刀流で挑む
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図4 有機ELパネル・モジュールを前面筐体から剥がすことに成功
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図5 フレキシブル基板上に、「Samsung」というロゴと「SMD」という文字が記載されている。左下にある黒いチップが、米Atmel社の「MXT224」
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図6 フレキシブル基板上に実装された積層セラミック・コンデンサ
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図7 タッチ・パネル部分と有機ELパネルを分離
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図8 PS Vitaの主要な構成部材
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 しかし、粘着力が強くなかなかはがれない。あまり力を入れると有機ELパネルを割ってしまう恐れがあるので、ここは技術者の方にバトンタッチ。が、その技術者も手こずる。

 せめて熱しながらはがせば、接着剤の粘着力が弱まり、スムーズに剥がれるかもしれない。iPad2の時はアイロンで温めて液晶パネル・モジュールをはがせた(Tech-On!関連記事)。しかし、前面カバーは樹脂製だ。あまり熱をかけ過ぎると変形したり溶けたりする恐れがある。そのため、アイロン技は諦めざるを得ない。iPad2では、その前面カバーがガラスだからこそできたのだ。

 などと考えていると、技術者がマイナス・ドライバーをベゼル付近の隙間に差し込み、その隙間を広げた状態を維持しつつ、自らもマイナス・ドライバーを手に持って隙間にねじ込んで、有機パネル・モジュールを引き剥がそうとしていた(図3)。いわば二刀流である。

 そのかいあってか、前面カバーやパ有機ELパネルにヒビが入ってしまったものの、有機ELパネルを含む部品を前面筐体からはがすことに成功した(図4)。

 パネル・モジュールに接続されているフレキシブル基板を見てみると、「Samsung」というロゴと「SMD」という文字が記載されているのが分かる(図5)。予想通り、有機ELパネルは、韓国Samsung Mobile Display(SMD)社製のようだ。

 続いて、フレキシブル基板上の二つの金属シールドを取り除く。一方には積層セラミック・コンデンサが多数実装されており、もう一方には、静電容量方式のタッチ・センサ用コントローラICが実装されていた(図6)。同ICは、背面タッチ・センサと同じく、米Atmel社の「MXT224」だった。

 今度は、有機ELパネル・モジュールの分解に着手する。まずはタッチ・パネル部分と有機ELパネルの分離を試みる。こちらも強固な接着剤で貼り合わせられていたが、マイナス・ドライバーを駆使し、分離に成功した(図7)。達成感はあるものの、有機パネルの分析はすぐにはできない。ディスプレイに詳しい同僚や技術者に話を聞く必要があるだろう。

 というわけで、PS Vitaの分解作業はひとまず終わり(図8)。詳細な解析記事は、日経エレクトロニクス2012年1月9日号に掲載している。