図1●ビッグデータの課題
図1●ビッグデータの課題
人材不足のほか、データのプライバシー保護など課題は多い
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 ビッグデータを業務に生かす製品やサービスが整ってきた一方で、越えるべき課題が多く残っている(図1)。

 最も大きな課題は人材不足だ。特に、大量データからパターンやルールを導き出す「深く」を実践できる人材が、世界的に足りないのが実情である。

 「データの量や種類が増えるにつれて、データの分析はより難しくなる。少量のデータからも価値を生み出せない企業が、大量のデータから価値を生み出せるはずがない。統計学や機械学習に関する高度な知識を持つ人材がいないと、効果を上げるのは難しい」。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、こう警鐘を鳴らす。

専門家の取り合いに

 フェイスブックは、ビッグデータから有益なパターンを見つけ出し、製品やサービスの改良を図る技術職を「データサイエンティスト」と呼ぶ。データサイエンティストのような統計の専門家は世界的に不足しているという。このため、「米国では、ネット企業による統計の専門家の採用競争が始まっている」(佐藤教授)。

 専門家の確保に向けて、動き出した日本企業もある。サイバーエージェントはその1社だ。2010年7月、「統計学やデータ・テキストマイニングを専門分野とする博士課程修了者・非常勤講師のみ」を対象とする人材募集を始めた。わざわざプレスリリースまで出すほどの熱の入れようだ。

 現時点では、博士課程修了者や非常勤講師は雇用できていない。それでも、バイオベンチャーからサイバーエージェントに転じた機械学習の専門家がいる。さらに同社は今春、秋葉原に「Ameba Technology Laboratory」という研究開発部門を新設し、データマイニングや機械学習の専門家を集めている。Ameba Technology Laboratoryの福田一郎研究室長は、「これからもメーカーなどから、データマイニングの専門家を獲得していきたい」と話す。