2012年はITの長い歴史の中でも最もエキサイティングな年となるだろう。クラウドコンピューティングやスマートフォン/タブレット端末、ビッグデータなど最近の大きな技術革新が、企業の情報システムの在り方を根本的に変えるはずだ。そして、既存のビジネスを変革し、新たなビジネス機会を生み出すに違いない。

 実は、2011年に多くの企業の経営者にインタビューして実感したことだが、経営者は今ITの価値を再認識し始めている。東日本大震災や原発事故、欧州債務危機の余波、異常な円高、そして日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加など様々な困難や事業環境の変化に直面する中、新規市場の開拓やグローバル化などの経営課題に立ち向かう上でのツールとして、ITの利用価値に気付いたからだ。

 まさに2012年には、「経営とIT」について再び真剣に語られ、取り組まれることになるだろう。なぜ、そのように言えるのか。まずはITの最新トレンドを見ることで、そのわけを解き明かそう。

クラウドが全ての起点、情報を「つくる」から「つかう」へ

 今やクラウド、スマホ/タブレット、ビッグデータは最近のITトレンドを示す「キーワード三点セット」だ。人によっては、ビッグデータの代わりにソーシャルメディアを入れて三点セットにするかもしれない。いずれにせよ最近の技術革新は凄まじい。企業の情報システムの分野にもその波は打ち寄せており、様々な技術的チャレンジの可能性が広がりつつある。

 こうした技術革新の全ての起点は、言うまでもなくクラウドである。クラウドの爆発的普及は、情報に対するアプローチを「つくる」から「つかう」に変えつつある。企業などの情報化は従来、データ入力やドキュメント作成などデジタル情報を生み出すための仕組み作りに力点が置かれていた。ところが今やクラウドの普及により、企業の内外にデジタル情報が溢れかえる時代となったのだ。

 実際、Googleなどのクラウドサービスには誰もが活用できる膨大な情報が蓄積されている。消費者によるTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアの活用が進んだことで、企業から見れば、それこそ天文学的な量のマーケティング情報が“自動的に”生み出され続けている。また企業内においてもプライベートクラウドなどの導入により、これまで部門システムなどに蓄積してきた情報を全社横断的に活用できる環境が整いつつある。