国全体が未曽有の試練に直面した2011年、ITproの年間総合アクセスランキングでトップに立ったのは、震災関連の速報記事だった。震災直後の東北地区の衛星写真を表示し、被害状況を確認できるようにしたクラウドサービスのニュース「グーグル、地震後の東北地区衛星写真をGoogle Maps/Earthで公開」である。
“情報枯渇”に直面したユーザーの需要にいち早く対応したITサービスの記事が1位となったことは、まさに今年を象徴している。こうした被災地支援/復興支援のITサービスは震災直後から相次いで発表され、ITproでも数多くの記事を掲載した。ただ20位までにランクインした震災関連記事は、この1本にとどまった。
2位以下の結果を見ると、昨年同様、スマートフォンやタブレット関連の記事が圧倒的な強さを見せたことが分かる。アクセス数上位20位までに、6割にあたる12本がランクインした。
特に、米アップルの共同創業者・前CEO(最高経営責任者)であるスティーブ・ジョブズ氏の死去直後に発表された、スマホ新機種「iPhone 4S」や最新OS「iOS 5」に関する記事が2位(iPhone 4S、KDDIとソフトバンクでは何が違う?)と5位(『iOS 5』に隠された6つの新機能)を占めるなど、2011年後半はアップルの動きに大きな注目が集まった。アップルが韓国サムスン電子を訴えたデザイン訴訟にも読者は高い関心を寄せ、その詳細な解説記事が4位(「総合的な模倣だ」 アップルが怒りを露わにする理由)にランクインした。
Androidに関する記事も数多くランクインしたが、アップル関連の話題と違い、最新のトレンドを伝える記事よりも、独自の切り口を持った読み物やコラム系の記事が上位に入った。3位の「話題の携帯向けOS『Android』をx86パソコンで動かしてみよう」、8位の「ここがヘンだよAndroid」、9位の「“変なソフト”として進化する人気Android日本語入力『Simeji』」などである。
震災とスマホ以外で、時事性の強いテーマを扱った記事としては、みずほ銀行の大規模システム障害を取り上げた解説/レポートがよく読まれた。11位の「みずほ銀行、障害の発端は人為ミス」と、17位の「重なった30の不手際」である。東日本大震災から3日後の2011年3月14日に発生したこのトラブルは、情報システムが社会基盤であることを今さらながら強く印象づけた。
このほか、切り口に冴えを見せるコラム系記事がいつくかランクインした。扱うテーマも様々だ。プロセッサのアーキテクチャに焦点を当てた6位の「x86の全盛期は終わった」、モバイルキャリアの周波数割り当て問題を扱った15位の「携帯各社の今後を左右する、900MHz帯の割り当て案は妥当か?」、IT業界の人材問題にメスを入れた20位の「日本のIT技術者はもういらない?」である。
いずれも、記者が日頃の取材活動で得た知見や問題意識に裏打ちされた、読み応えのある記事である。ぜひご一読いただきたい。