金融担当大臣による強制適用見直し発言後も、約60%の企業がIFRS(国際会計基準)対応プロジェクトを継続。IFRSがIT戦略や情報システムに与える影響は「大きい」と7割弱が考えている――。

 日経コンピュータが11月中旬に日経BPコンサルティング、IT総合情報サイト「ITpro」と共同でITpro会員に調査した結果から、IFRS対応の実態が明らかになった。調査の有効回答数は4001人、期間は2011年11月16~28日である。

 IFRSの適用時期は15年3月期から早くても17年3月期と、2年延びた。このため、「IFRS対応プロジェクトを中断して、様子見に転じる企業が多いのではないか」との見方もある。

図●IFRS対応計画を変更したか
図●IFRS対応計画を変更したか
対応に着手した企業の6割が作業を継続している

 ところが、自社または顧客企業のIFRS対応プロジェクトに参加・協力する(予定を含む)など、IFRS対応にかかわっている504人の回答を総合すると、延期後もIFRS対応プロジェクトを継続する企業は6割近くに達する()。「計画を変更していない」は20.6%。「計画を変更したが継続」が最も多く、38.7%だった。

 各社がプロジェクトを継続する背景には、「ビジネスのグローバル化が進み、IFRSの採用は避けられない」との事情があるようだ。自由意見では、「IFRS適用の是非は分かれるが、グローバル化の波には逆らえない」「国際競争に勝つには早めに対応すべき」といった声が寄せられた。

 IFRS対応プロジェクトを進めるなか、システムへの影響はどの程度あるのだろうか。回答者の7割弱が、IFRS対応はシステムに影響を及ぼすと考えている。

 「システムやIT戦略への影響をどのように考えるか」を尋ねたところ、影響が「大きい」が48.5%で最も多く、「非常に大きい」は20.2%だった。「影響なし」と回答したのは12.2%と少なかった。IFRS対応を進める上で、何らかのシステム修整は避けて通れないとの認識が広がっていることが、改めて浮き彫りになった。

 IFRS適用の影響が大きいと考えるシステムを尋ねたところ、回答は会計関連システムに集中した。20%を超えたのは、「財務会計(74.6%)」「連結会計(45.2%)」「固定資産管理(34.0%)」「原価計算(26.7%)」の4システムだった(複数回答可、最大三つまで)。

 アンケートの自由意見では、IFRS対応を進めるためにも金融庁に早い決断を促す声があった。「IFRS適用時期に関して、早急に確定してほしい」「導入対象企業や時期などをはっきり決めて、早く提示してほしい」などだ。金融庁の議論では、対応の準備を進める企業に対して、より一層の配慮が求められる。