2012年を迎えました。「明けましておめでとうございます」と笑顔で会話を交わす人々がいる一方で、東日本大震災で被害にあった方々はまだまだ心が沈むことも多いと思います。1日も早い回復・復興を願っています。

 震災の爪痕が残る今年の企業経営とIT動向は「リスクヘッジ」が大きなテーマになると考えます。もちろん避けられないリスクはありますが、「備えあれば憂いなし」の言葉が示すように企業努力で被害を減らしたり、快適さを高めたりできることも数多くあります。

 「経営革新にITを活かす」を編集コンセプトに掲げる月刊誌・日経情報ストラテジーは最新号の2012年2月号で「経営を変える7つのキーワード」と題した特集を組んでいます。そこからリスクヘッジの在り方を考えたいと思います。

電気自動車、オフィスビルなどエネルギー制御が課題に

 まずは、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)です。

 寒い冬にも暑い夏にも欠かせないエネルギー。原子力発電所の停止が続くなかで、企業でも家庭でもこの制御(コントロール)が重要な課題となっています。そこで新たな動きを見せるのが、自動車会社やIT関連企業です。EMSに注目して自社製品に省エネ性や安心感を加えています。

 例えばトヨタ自動車グループのトヨタホームは、電気自動車やプラグインハイブリッド車に家庭の電気を充電できる機器「H2V Manager」を1月に発売します。これは車と家をつなぐ新タイプの機器であることに加えて、家庭の電気使用量を管理する機能を持つことが特徴です。モニターを備えて、エアコンや洗濯機、電子レンジなど全体の電力使用量を把握して、総合的にコントロールします。

 このように家庭向けのEMS(HEMS、Hはホームの意味)が始まるとともに、街や企業単位でのEMS(BEMS、Bはビルディングの意味)も徐々にその輪郭が浮かんできています。清水建設では2012年春に完成する新本社でパソコンの電源を自動制御できる仕組みを導入する予定で、パソコンの消費電力量を最大30%削減することを目指します。パソコンだけでなく余熱で発生する室温の上昇を抑える効果もあります。

 このように家庭やビル単位で省エネが浸透すれば、エネルギーリスクは減っていくでしょう。さらにEMSの普及は、1つの都市や企業のエネルギーやインフラを丸ごと管理する「スマートシティー」構想の実現にもつながります。地球に優しい「エコ」の時代から、人間生活に欠かせない「省エネ」ビジネスへと移行して、様々な企業が参入し、市場が拡大するでしょう。

 仮にエネルギー供給が安定したとしても、EMSは必要な時に必要なだけ、必要な人・場所に効率的に分け与える「ジャスト・イン・タイム」手法としても活用できるだけに、資金節約の視点からも欠かせません。