スケジュール上にイナズマ線を引いて進み具合を可視化したり、発生した問題を一覧表で管理したり…。

 プロジェクトマネジメントは「手順や道具」の専門的な話題が中心になりがちですが、あくまでプロジェクトは“人”が行うもの、成功の原動力はやはりメンバーにあると言えるでしょう。従って、プロジェクトマネジャーはメンバーの状況にも常に気を配っておくべきですし、まさにPMの腕の見せ所と言っても過言ではないでしょう。

 とは言え、この部分はPM自身の人間性、ヒューマンスキルによるところも大きですし、また、組織や人をマネジメントする方法や心構えなどを解説する書籍(例えば、「管理職入門」とか「部下のやる気を引き出す方法」など)は数多くありますから、今回は「プロジェクトにおいて、PMは何を見ておくべきか」という視点で全体を見渡していくことにしましょう。

個々のメンバーのこと

 まず、PMはプロジェクトに参加している個々のメンバーの状況を確認しておかなければなりません。この時、見るべき観点は以下の3点です。

(1)パフォーマンスと負荷・健康状態
(2)スキル
(3)モチベーションなどのメンタル面

 基本となるのは、各メンバーのパフォーマンス(生産性)の確認です。パフォーマンスとは、一定の時間の中でどれだけ成果(量と質)を生み出せるかということです。

 パフォーマンスに問題があると、多くの場合はスケジュールの遅延(例えば、あるメンバーの作業がいつも遅れる)や品質上の問題(あるメンバーの作った成果物に不良が多い)といった事象として表面化するため、そこからPMは問題を把握して、対策を講じることになります。

 ただし、「毎日夜中まで残業してなんとか成果を出している」ようなメンバーは、なかなかパフォーマンスの問題が表面化しない場合もあります。もちろん、そのメンバーはやがて疲弊し、ダウンしてしまうといった危険性がありますので、メンバーの体調管理の面から見ても、そのような過負荷な状態があれば早期に発見して是正しなければなりません。

 そのためには、メンバーの時間の使い方を正確に把握しておくことが必要です。勤務時間とその中でプロジェクトの作業に使った時間を管理し定期的に確認しておくことはもちろん、「あのメンバー最近顔色が悪いな」とか「なんだか元気がないな」といった、メンバーの表情や振る舞いにも注意しておくことが重要になります。

 特定のメンバーのパフォーマンスに問題がある場合、いくつかの理由が想定されます。

 指示や情報が行き届いていない、仕事に必要なツールや環境が不十分など挙げられますが、もし「手順や道具」に問題がないとすれば、スキルが不足していることが考えられます。

 そのような場合、計画を見なおして作業の分担や作業期間を調整するか、教育プログラムなどによってメンバーのスキル向上を図ることを検討します。ある程度の期間を通じて行うプロジェクトであれば、プロジェクトの仕事の経験によってメンバーの育成を図っていくことも考えるべきです。

 また、もしかしたらパフォーマンスが悪い原因はメンバーのモチベーション(やる気)や、精神衛生的な問題にあるかもしれません。そのような状況にも常に目を配り、メンタル上の問題やその予兆があればすぐに対処する必要があります。

 もちろん、プロジェクトメンバーのモチベーションを上げるということはなかなか難しいことです。しかし、少なくともPMのプロジェクトマネジメントがまずくて自らがメンバーのモチベーションを下げてしまう原因になること、例えば、プロジェクトの段取りが悪くてメンバーの作業が無駄になるとか、コミュニケーション方法に問題があって不正確な情報により誤った判断してしまうといったことが起こらないよう、まずはPM自身が十分に注意しなければなりません。