ビッグデータ、クラウドコンピューティングなど、IT業界には話題のキーワードが次々と登場するが、コンセプトだけではビジネスに貢献できない。現場のITエンジニアは、そうしたキーワードがもたらすメリットをよく見極め、必要ならば先手を打とう。日経SYSTEMSではそうした姿勢で話題のキーワードに取り組んでいく。

 キーワードに振り回されてはいけないが、学ぶ姿勢を忘れてはならない。例えば「SNS(Social Networking Service)」。GREE、Mobage、mixi、Facebookなどは多くのユーザーに利用され、今やネットの主役といっていい状況だ。こうしたSNSは、多くのユーザーをひきつけるだけの魅力がある。

 目新しさもあってユーザーが集まっている面もあるだろうが、SNS側の現場も懸命に努力している。企業システムと特性が異なるとはいえ、そこには、企業システムのエンジニアが学ぶべきことはたくさんある。

 特に注目したいのは、「カットオーバーはスタート」という姿勢である。ユーザーの利用状況を見てどんどん改善していく。するとユーザーは使い続けるうちに、最初不満に思ったことがそうではなくなり、快適にサービスを利用できるようになる。

 企業システムに置き換えてみよう。例えば、大量データの分析システムを作るとする。はやりの「ビッグデータシステム」と呼んでもよい。どんな機能が必要なのか、どんなユーザーインタフェースにすべきなのかと、じっくり考えることは大事だが、仮説に基づいてシステムを作成し、早くユーザーに提供することを優先すべきだ。そして、システム開発はカットオーバーしてからが本番と考える。最初は使いにくいかもしれないが、改善を続けてより良いシステムにしていけばよい。

「作って終わり」の情報システムはない

 最近の企業システムは保守開発が多いと聞く。好むと好まざるとにかかわらず、カットオーバーしてからシステムに手を加えていかなければならない。「好むと好まざると」と書いたが、そもそも情報システムとはそういうものではないだろうか。

 システムは作るためにあるのではない。ビジネス上の目的を果たすためにある。たとえ基幹系システムであったとしても、いや企業の屋台骨を支える基幹系システムだからこそ、作って終わりということはあり得ない。こう書くと当たり前のようだが、これまではどちらかといえば、企業システムのITエンジニアは運用より開発に重点を置いていた。

 保守開発が多くなる一方の現状では、「作ったら次の新規開発案件に移る」とはいかない。そうすべきでもない。開発したシステムをより良くしていくことに積極的に関わるべきなのだ。想定通りに使われているか、使われていないとしたらどこに問題があるのか、どのように修正したらもっと良くなるのか――。

 改修や機能追加などの“カイゼン開発”を積極的に進めていくことが、企業システムに関わるITエンジニアに求められている。カイゼン開発と呼ぶかどうかは別にして、こうした取り組みは2012年の大きなテーマになっていくだろう。