スマートフォンがもたらしたゲームの変革はどこへ向かうのか。東京工芸大学芸術学部 ゲーム学科 准教授 宮澤 篤氏、メディアクリエイト 代表取締役 細川 敦氏、SMBC日興証券 証券調査部 シニアアナリスト 前田 栄二氏、ゲーム・ジャーナリスト 新 清士氏、米PushButton Labs社 Co-Founder & Partner Ben Garney氏、米Interpret社 Vice President of Research,Video Games Michael Cai氏ら識者が未来を予測する。
これまでのゲーム業界の秩序ではメディア(ゲーム機)がまず登場し、この枠の中でコンテンツ(ゲーム・ソフト)を作ってきた。つまり、ゲーム業界においての支配者はゲーム機メーカーであり、ゲーム・ソフトの開発者ではなかったのだ。

スマートフォンの登場で起こりつつあるのは、この秩序の崩壊である。Google社はOSを作るが、ハードウエアやゲーム・ソフトを実行するためのミドルウエアは規定しない。この結果、ゲーム・ソフト開発者の側がハードウエアやミドルウエアを規定することが可能になった。
SCEのPSS戦略は、この混沌とした世界に秩序をもたらす動きだ。ハードウエアは直接作らないが、ハードウエアの仕様を規定し、恐らくミドルウエアも規定するからだ。
任天堂のすごさは、自らが先頭に立ち、ゲームが面白くなるようにゲーム・ソフト会社を指導する点にある。これをなし得たのは、任天堂が出すゲームは面白いという、ブランド・イメージが確立したからだ。PlayStationでブランドを確立したSCEが、PSSでこのモデルに近づこうとしているのではないか。
スマートフォン向けゲーム市場の将来を見通すのは正直難しい。多くの企業がこの市場で主導権を握ろうと続々と参入してきており、まさに混戦状態だからだ。

中でも、Android向けゲーム市場は「無秩序」な状態にある。さまざまなバージョンのOSが混在する上、利用する機器の種類も多い。そのため、ゲーム・ソフト開発者は、開発したゲーム・ソフトの動作確認に苦労している。存在するゲーム・ソフトも玉石混交で、面白いものもあれば、つまらないものもあり、ユーザーも困惑している。
それゆえ、このAndroidの世界に「秩序」をもたらした企業こそが、ゲーム・ソフト開発者やユーザーの支持を集め、Android搭載機向けゲーム配信事業の有力者となれるだろう。
2012年までこの混乱は続き、2013年ごろに収まるとみている。そういった意味で、2011年初頭にSCEがPSSを発表したのはよいタイミングといえる。
スマートフォン向けゲーム市場は、現在は先行者利益が出ている段階であり、混乱が収まる2013年ごろに市場の見取図が鮮明になるだろう。