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参入障壁が低下

 ソニーがスマートフォン市場に向かうのは、端末のハードウエアやソフトウエアの進化の恩恵を受ける形で、同市場参入への障壁が下がったことも背景にある(図3)。これまでのゲーム業界において、新たに市場参入するためには、高度なグラフィックス描画が可能なゲーム専用機を自社で用意することと、ゲーム・ソフトをユーザーに届けるための流通網を構築することという、二つの要素が不可欠だった。

図3 スマートフォンでPS2並みのゲームを実行可能に
図3 スマートフォンでPS2並みのゲームを実行可能に
ハードウエアの進化によって、スマートフォン上でPS2並みのゲームを楽しめるようになった。 3G回線の標準搭載や定額通信サービスの普及によって、ゲーム・コンテンツのダウンロードも 容易になっている。
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 だが、これらの壁をスマートフォンの進化が突き崩した。まず、アプリケーション・プロセサの処理性能向上などにより、スマートフォンで1世代前の据置型ゲーム機並みのゲームを楽しめるようになった。ゲーム機としての表示性能だけを見れば、「単純に言えば、PS2を超えた『PS2.3』水準」(あるゲーム開発者)である。つまり、新たにゲーム専用機を用意する必要がなくなったのである。

 流通網の構築では、3G回線の標準搭載や定額通信サービスの普及が大きい。これにより、スマートフォン単体でのゲーム・ソフトのダウンロードが可能になった。この通信機能を利用すれば、さまざまな企業が思い思いのアプリ・マーケットを作って、ゲーム・ソフトを流通させることができる(図4)。

図4 Androidを使い、誰もがモバイル・ゲームの配信事業者に
図4 Androidを使い、誰もがモバイル・ゲームの配信事業者に
これまでは、ユーザーを認証してモバイル・ゲームを配信し、課金する配信事業者になるには、 専用機や開発環境などの自社開発が不可欠だった。現在は、Android端末を利用し、ゲーム・ソ フトの流通網として自社のオンライン・サイトを利用すれば、ゲーム配信事業者になれる。
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ローリスクが開発者を呼び込む

 ゲーム・ソフト開発者が、スマートフォン向けゲーム市場に続々と参入し始めたことも、ソニーが同市場に向かう一因となっている。