ソーシャルメディアの普及でネット上に顧客の声が広がるにつれ、これらを顧客の本音として補足し活用することが企業にとって重要になっている(参考記事)。企業はソーシャルメディアを、コントロールできない不安材料として考えるのではなく、発言力を持った顧客が自ら自分のニーズや要望を発信しているメディアと前向きにとらえるべきだろう。
企業のマーケティングにソーシャルメディアを本格活用しようとした場合、ツールの利用は欠かせない。ツールを使うことで、ソーシャルメディアの膨大なデータを効率的に把握して分析できるだけでなく、効率的な運用管理も可能だ。
ソーシャルメディアのユーザーは重要な協力者
ソーシャルメディアアカウント管理ツールで有名な米国企業のSyncapseが、2010年6月に実施した調査を基に「Value of a Facebook Fan: An Empirical Review - Facebookファンの価値」と題する興味深い調査結果を発表している。この調査では、ジレット、ダブ、ナイキなど20の企業において、4000人のFacebookのファンと非Facebookファンを比較し、どの程度Facebookファンの価値が高いのかを明らかにした。その結果としては、1.製品サービスの購入、2.ブランドロイヤリティー、3.口コミ推奨度、4.ブランド親近度、5.メディアの価値、6.獲得の原価--といった6点で、Facebookファンの価値を高く評価している。
欧米では、こうした顧客を「Sales People」と呼び、企業を代弁して口コミを広げて商品を売ってくれる協力者ととらえている。そのため、企業は彼らとの対話のために体制を変革し、ソーシャルメディアや自社コミュニティーを管理する人員を増強している。ソーシャルメディア担当者は社内の全チームを横断する存在として活躍するのだ。
翻って日本では、今までは1人の担当者が運営したり、または複数の担当者の運営であっても投稿する情報をメールやExcelで管理したりと、非効率な運営をしていた。そのため顧客とのリレーションにおいてミスが起きやすかった。また効果測定も無料ツールを使ったり、場合によって目視を使っていたため、レポートの作成時間も負担になっていた。
その一方で、日本でも2010年頃からは積極的に顧客に対して接触していくアクティブサポートをする企業も増加している。有名なところでは、ソフトバンクをはじめ、アスクル、ブックオフオンライン、貝印のカイタッチ・プロジェクトがある。こうした顧客との“エンゲージメント”において、複数の担当者が対応し、効率化できる部分はテクノロジーで効率化するということが求められるようになってきている。