サーバーのデータセンター移設とともに、業務アプリの継続運用の面で威力を発揮するのがクラウドサービスの導入である。自社に特化した業務アプリ以外、例えばメールやグループウエアは、パッケージを利用して外部に切り出したほうが、運用コストや業務継続性でメリットがあると考える企業が増えてきている。
アンケート結果にもそれが現れている。2010年の調査ではクラウドサービスを「使っている」企業は11.0%にとどまったが、今年は利用している企業が22.7%に跳ね上がった(図1)。利用するクラウドサービスの内訳は、SaaSの利用が最も多く19.3%。これにHaaS/IaaSが5.2%、PaaSが2.3%と続く。
導入に伴って重視する点は、信頼性・安定性、コストパフォーマンスが群を抜いて多い(図2)。逆にクラウドサービスを利用しない理由として、「コストメリットがない」「セキュリティ面の不安」「信頼性・安定性に不安」といった声も根強い。
住宅メーカーのミサワホームは、震災を機にクラウドサービスやシンクライアントの導入を進める計画を打ち出した(図3)。「今回の震災ではネットワークやシステムに直接的な損傷はなかった。しかし電話がつながらず、運用担当の社員が出社できないといった課題が表面化した。その点でのBCPの取り組みが甘かった」と、同社の宮本眞一企画管理本部情報システム部長兼業務効率化プロジェクトマネージャーは語る。
そこで連結ベースで9000人程度を対象に、メール/グループウエアのクラウドサービスとして、米グーグルの「Google Apps」を導入する。「働く場所によらない環境を作る」(宮本部長)ためだ。
実は震災以前は別のグループウエアに内定していたが、震災後に見直し、Google Appsを選んだ。「緊急時の連絡手段を検討していたところ、Googleトークに魅力を感じ、グループウエアも含めてGoogleのサービスに統一した」(宮本部長)。端末にはiPhoneやiPadを使い、Googleトーク対応のアプリケーションを利用して緊急時に通話することを検討している。
宮本部長は「従来は業務アプリはすべてスクラッチで作ってきたが、今年4月に方針を変え、パッケージを活用していくようにした。運用もクラウドサービスなどに極力アウトソースし、情報システム部門の役割をICT全体の統制やセキュリティ確保に特化させていきたい」と語る。
ソフトウエアベンダーの富士ソフトも、2年半前からメールやグループウエアとしてグーグルのGoogle Appsを利用している。導入済みのシンクライアント環境と併せて「どこでも仕事ができる環境を整えていたことで、震災後も問題なく業務継続できた」と、富士ソフトの山岡寛典ITマネジメント部長は語る。