アンケートでは電力対策以外でのBCP見直しの取り組みについても聞いた。「復旧手順の見直し」に加えて、「サーバーの構成変更や増強」「ネットワークの構成変更や増強」「社内の通信体制の整備」といった項目が上位に来た(図1)。ここでは「ネットワークの構成変更」に注目しよう。

図1●電力対策以外のBCPの見直し状況
図1●電力対策以外のBCPの見直し状況
「サーバーの構成変更や増強」「ネットワークの構成変更や増強」「社内の通信体制の整備」など幅広い取り組みが進んでいる。
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 ネットワーク構成変更の内訳として「ネットワーク機器の冗長化」と「拠点間ネットワークの冗長化」を挙げる企業が多かったが、個別の取材ではWAN構成そのもののボトルネック、特にスター型の構成が問題になったとする企業も目立つ。

 例えば文房具・事務用品の大手メーカーであるコクヨ。同社は、各地域にある事業会社にサーバー類を置き、その配下に各支店がぶら下がるツリー型のネットワーク構成を採用してきた。各支店は地域ごとの事業会社を経由して、本社やデータセンターにアクセスする。コストを最優先したWAN構成だが、計画停電によってその構成の課題が表面化した。いくつかの事業会社が計画停電のエリアに該当し、「エリア外の支店も含めて配下の支店がすべて影響を受ける事態になった」(コクヨビジネスサービス ITソリューション部システムインフラグループの永沼淳一氏)

 そこで同社はツリー型の構成を見直す。今年中にもすべての拠点、事業会社を同一のWANに収容するような、シンプルなネットワーク構成に変更する。WANの見直しに加え、各事業会社に設置したサーバー類は基本的にデータセンターへと移設する。

 また、サーバー移設によりWAN経由のデータ量が増えることが予想されるため、コストメリットの高い、バースト型通信対応のWANサービスの採用を検討している。NTTコムの「Arcstar Universal One」やKDDIの「KDDI Wide Area Virtual Switch」(WVS)といったレイヤー2(L2)/レイヤー3(L3)混合型のサービスだ。

 ソリューションプロバイダーのテクマトリックスも、震災に伴ってWAN構成を変更した1社である。同社のネットワークも、東京・品川の本社にすべての支店がぶら下がり、東京を経由しないと外部にアクセスできないスター型の構成だった。「東京が止まるとすべての拠点が孤立してしまう」(テクマトリックスの間瀬和哉管理本部企画部システム課長)ため、4月の時点ですべての拠点からネットへアクセスできるフラットな網構成へと変更した。

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