震災を機に、企業ネットの新常識になりつつあるのが「業務サーバーは外に預けたほうがリスクは低い」という考え方だ。
前回紹介したわらべや日洋は、サーバー類のデータセンターへの移行とクラウドサービスの利用を進める計画を固めた。データセンターへ移行するサーバー類は、自社の業務向けに特化した製造系システムなど。データセンターのサーバーを本番系、本社のサーバーを待機系として運用し、本社のサーバーは平時には開発・保守用としても使う。
自社で踏み込んだ開発・保守を行っていないパッケージアプリやグループウエア、ファイルサーバーなどは、外部のパブリッククラウドサービスへのアウトソースを検討する。「システムを冗長化すると待機系が平時に不稼働資産となる。アウトソースによって運用コスト削減を図る」(大木部長)。
未経験の停電を想定してBCP
中堅ゼネコンの熊谷組も、震災を機にこれまで東京飯田橋の本社に設置していた全社の業務サーバー類を、データセンターへと移行した。「実際には本社は計画停電エリアではなかったが、仮にエリアになった場合を想定したBCP作りに取り組む必要があった」と同社の鴫原功管理本部管理部担当部長は語る。
当初は自家発電によって停電時にもサーバー類を動かすことを考えた。しかし、相当な投資が必要なことが分かり、サーバー類をデータセンターへ移設する手段が最適という結論に達したという(図1)。
同社はコスト面や今後のクラウドサービスへの拡張性も考慮し、ソフトバンクテレコムのデータセンターを採用。さらにコストを削るためにWANも見直し、これまで使っていたNTTコミュニケーションズ(NTTコム)とKDDIのサービスを、ソフトバンクテレコムのサービスへと切り替えた。「ネットワークコストはほぼ半減。本社のサーバー室の空調の電気代が減ったことまで考慮に入れると、データセンターの費用を含め、ランニングコストは今までとほぼ同水準に収められた」(鴫原担当部長)という。
同社がトータルコストを抑えるうえでは、サーバー仮想化の効果も大きかった。仮想化によって、データセンターに移設する物理的なサーバーの数が減り、コストメリットを得られる。熊谷組は、かつて40台ほどの物理サーバーを使っていたが、ここ数年で仮想化の取り組みを進め、直近では物理的なサーバーは数台程度になっていたという。
アンケートでも多くの企業が仮想化の取り組みを実施済みであることが分かった。半数以上の企業がサーバー仮想化を導入済み/導入予定であり(図2)、こちらも企業ネットの新常識になりつつあるといえる。
なおサーバー移設に伴って、データのバックアップ体制構築が新たな課題として浮上しつつある。単純なようで、「データセンターと拠点の回線の太さや、バックアップの手順など、考えるべき項目は多い」(鴫原担当部長)。今後、企業ユーザーにとって重要なテーマになりそうだ。