経営層が期待するシステム部門になるには、その役割や仕事、システムの構造とともに、システム部員のスキルも変わらなければならない。だが、これまで人材育成の必要性を認めながらも、システム部門は有効な具体策を打ち出せてこなかった。何もしなければ、人は変わらない。

 システム部門の組織や役割、仕事を変えるだけでは、「事業に貢献できるシステム部門」という目標は達成できない。システム部員自身も自ら変革する必要がある。とはいえ、システム基盤やアプリケーションの運用・保守ばかりを担当していた部員が、ある日突然、経営戦略や事業戦略、IT戦略を立案できるようにはならない。受け身の姿勢で仕事をしていた部員が、ある日を境に積極的にシステム活用策を提案できるようには決してならないのだ。

 システム部員の意識改革や成長を待つのではなく、意図的に変革を推進できる人材を育てていかなければならない。

経営層がシステム部員に期待する七つの能力

 将来のシステム部門を支える「変革人材」は、七つの能力(スキル)が求められる。ユーザー各社のCIO(最高情報責任者)ヒアリングや、当社のコンサルティング経験を基に導き出したものだ。

(1)IT戦略立案能力
 経営戦略や事業戦略の実現を後押しするIT戦略の立案能力。経営環境の変化や技術動向を的確に把握する能力も兼ね備えている必要がある。経営層や事業部門とのコミュニケーション能力も不可欠である。

(2)変革推進のドライブ力
 変革することを恐れず、強いリーダーシップを発揮して変革を推進する能力。変革の反対勢力と粘り強く交渉したり説得したりして、プロジェクトを取りまとめる能力が求められる。

(3)問題整理・解決力
 業務課題などの原因と結果を整理し、本質を見抜く能力。例えば、ユーザー部門にある潜在的な課題や要望を探り出し、言葉や図で分かりやすく説明したり、適切な解決策を提示したりできる能力が求められる。

(4)ビジネス設計力
 自社のビジネスや業務プロセス、その背景にある業界の慣習などを深く理解し、業務改革プロジェクトを推進したり、新たにビジネスを創出したりする能力。システムを活用する利点と欠点を冷静に判断・分析しながら、効果を最大化する方策を考えられる。

(5)IT企画・設計力
 情報技術に対する知見を生かし、企業競争力を高めるシステムの導入・活用策を考える能力。技術動向やシステムのライフサイクルにも目配りしながら、最適なIT活用策を提案できる能力である。

(6)プロジェクトマネジメント力
 チームを取りまとめ、プロジェクトを円滑に進める能力。システムを活用した業務改革の構想策定から、システムの企画・構築、効果創出までのライフサイクル全般を管理する。

(7)ベンダーマネジメント力
 システム開発・運用委託先やハードウエア/ソフトウエアの調達先を管理する能力。ITベンダーとの協調関係を築くために、積極的に情報を共有したり、必要に応じてユーザー部門を説得したりする。ベンダーの提案内容や開発・運用工数の妥当性を、見極める能力も兼ね備える。

 これら七つの能力は、筆者のようなコンサルタントがお客様から常に求められている能力と似ている。つまり、システム部門の変革を推進する人材を育てるということは、「システム部員を社内コンサルタントに変える」ということでもある。