前回は、単に「ソーシャルメディア上で自分たちのビジネスに関する情報を広めていきたい」という目的だけでソーシャルメディアを活用した施策に取り組んでしまうと、ともすれば負担ばかりがかかり、思ったほどの効果が得られない、いわゆる「割に合わない」結果に終わってしまう可能性も十分にある、ということについて述べた。

 もちろん、企業として何かの施策をドライブしていく際、そこには何らかの目的や理由はあるはずだ。では、ソーシャルメディアを実際に利活用していくことを考えるにあたっては、どのような目的を意識した上でアプローチしていけばよいのだろうか。今回は、この点を改めて考えてみたい。

 現時点でソーシャルメディア上で顧客とコミュニケーションを行う際、必ずといっていいほど語られるのが「キズナ」や「つながり」、そして「エンゲージメント」という言葉で表される、いわゆる「顧客との関係性」である。ただ、これではかなり漠然となってしまっている感は否めない。実際、企業が自分たちのビジネスに対してソーシャルメディアを使っていくことを考えるのならば(ソーシャルメディアに限った話ではないが)、より具体的なレベルにまで落とし込んでいくことが求められるだろう。

「会社の認知度向上」や「コンテンツの集約」など活用例がある

 たとえば、これまでコーポレートサイトになかなか訪れてくれなかったユーザーに対し、ソーシャルメディア上にタッチポイントを作るという場合でも、どういったユーザーに対してソーシャルメディア上でアプローチをしていくかということをより深く考えていく必要がある。

 具体的には、会社の認知度を高めるために活用するということも考えられるだろう。既に事例がいくつか出てきているように、たとえば自分たちのビジネスを海外展開させるにあたって、Facebookを使い英語で情報を発信していくことで海外での認知を高めているケースもある。これは多くのコストとリソースをつぎこんで英語版のコーポレートサイトを構築するより、ある意味手軽にページを構築できる上、世界中に億単位で存在するユーザーに対して情報を届けられる可能性がある点で非常にメリットがあるだろう。

 ちなみに、よく日本で「全世界で◯億人のFacebookユーザーが……」というように強調されることがあるが、コンテンツやコミュニケーションを日本語だけで提供していては、対象が日本国内に限定される状況となる。ターゲットを世界にすることで、はじめてFacebookの膨大なユーザー数を生かすことができるのだ。

 また、Facebookを活用する場合、自分たちの情報を単に発信するだけではなく、これまでコーポレートサイト、ブログ、Twitter、YouTubeなどのオンライン空間にバラバラに公開されていた情報やコンテンツをFacebookページという一つの「場」に集約させた形で見せることが可能になる。コンテンツ同士の相乗効果を狙い、顧客に対してより企業、ブランド、製品、サービスなどを深く理解してもらうようなことも、目的の一つとして考えられるだろう。

 ここでは、いずれも非常に「わかりやすい例」を挙げたが、ソーシャルメディア上にチャネルを設けて漫然と情報を発信するだけの活動では、その効果はいずれにせよ非常に限定的になってくるだろう。「海外における認知度を向上させる」「これまでとは違った属性を持つユーザーとコミュニケーションする」「オンライン上にバラバラに散らばっているコンテンツをまとめコーポレートサイトの “出先機関” のようなものを構築する」といった、具体的な目的を持った上でソーシャルメディアを利活用した施策を考えていく必要がある。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。