Android OSをリリースしているのはOHA(Open Handset Alliance)という団体だが、実質的な開発主体がGoogleであることは誰でも知っている。Androidの今後を知る上で、Googleが「何を考えているのか」という情報は重要だ。にもかかわらず、それを知ることはなかなか難しい。

 IT分野、特に米国シリコンバレーに本社を置く企業は「普通ではない」企業だらけだが、その中でもGoogleはかなり「分かりにくい」企業ではないかと思う。もちろん、同社の経営幹部は多くのカンファレンスで発言し、Googleに関する報道は大量にメディアに掲載されており、いくつものGoogle公式Blogが更新を続け、さらに一般消費者向けテレビCMを含めた広告もよく見かけるのだが、それでもGoogleが企業として何を考え、どのような活動を進めているのか、という全体像はなかなか見えにくい。第三者の論評は膨大にあるが、インサイダーの「肉声」が公開されることが滅多にないからだろう。

 そんなGoogleもソフトウエア開発者には別の顔を見せてくれる。ソフトウエア開発者は、Googleが世に問う様々な技術---Android、Google Chrome、App Engine、各種Web API群など──を世の中に広めるための最初のユーザーとなるからだ。そこで、「Googleが社外のソフトウエア開発者向けにどのような情報を提供しているのか」という情報は、同社の現在と今後を知る上で貴重な資料といえる。

 Googleは、社外のソフトウエア開発者を対象とした大小様々なイベントに力を入れている。最も大きなイベントは1年に1回開催される「Google I/O」だが、それに次ぐ規模のイベントが、世界各国で開催される「Google Developer Day(GDD)」である。

写真1●Google Developer Day 2011 Tokyoの模様

 ここでは、先の11月1日に日本国内で開催されたGoogle Developer Day 2011 Tokyo(GDD2011 Tokyo)でGoogleがソフトウエア開発者達に放ったメッセージの中から、同社がどのような姿勢でAndroidに取り組んでいるのかに注目してみたい。

Android4.0、東日本大震災、Google+…Googleの関心事とは

 このGDD2011 Tokyo重点的に取り上げられたキーワードがいくつかある。その一つがAndroidの新バージョンであるAndroid4.0、開発コード名"Ice Cream Sandwich"である。

 もちろん、重要キーワードは他にもある。最も重要なキーワードは「東日本大震災」だった。Googleは、2011年3月11日の東日本大震災の発生直後から、大手インターネット企業の「クライシスレスポンス」として「できること」に取り組んだのだが、そこで「多くのものを学んだ」と同社は語る。さらに、同社の開発者向けイベントの“定番メニュー”とも言うべきキーワードとして、「Google Chrome」「HTML5」があり、さらに2011年に登場した「Google+」がある。これがGDD2011 Tokyoのキーノートの主要な話題だった。