薄日は差すが、曇りがち――。2012年度のIT投資動向を天気予報で例えると、こうなるだろう。

 日経コンピュータはユーザー企業のCIO(最高情報責任者)やシステム部長を対象に、「IT投資動向調査」を実施した。調査期間は2011年10月13日から10月30日、有効回答数は189である。「薄日」の根拠となるのが下のだ。ユーザー企業の3割強が、2011年度と比べて2012年度はIT予算が増えそうだと予測している。

図●2011年度と2012年度の、前年度比IT予算増減見込み
図●2011年度と2012年度の、前年度比IT予算増減見込み
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 前年度末に発生した東日本大震災や夏の電力不足の影響で、IT業界では2011年度のIT投資を懸念する声が根強い。だが、調査結果からは堅調さが見て取れる。2011年度のIT予算が前年度と比べて増加したと回答した企業の割合は28.5%で、減少したとする20.7%を上回った。

 増加の割合から減少の割合を引いて算出する、2011年度の日経コンピュータ版「IT投資DI(ディフュージョンインデックス)」は7.8ポイントのプラスとなった。2011年度のIT投資の底堅さが浮き彫りとなった格好だ。

 2012年度はそれがさらに好転する。32.2%の企業が今年度と比較してIT予算が増加すると予測し、減少すると見るのは14.8%に過ぎない。IT投資DIは17.4ポイントのプラスである。

 2012年度の重点投資分野を聞いたところ、二つのキーワードが浮かび上がった。震災を契機に見直し機運が高まる「BCP(事業継続計画)」と、相次ぐサイバー攻撃に対処するための「セキュリティ」である。これら二つの分野では、2011年度に比べて投資が増えることが予想される。

 ただし、懸念もある。2012年度のIT予算は増えたとしても、微増レベルにとどまりそうなことだ。図を見ても、前年度比でIT予算が10%以上増えると回答した企業の割合は減少傾向にある。

 11月29日にアイ・ティ・アールが発表した「IT投資動向調査2012」からも、IT予算の頭打ち傾向が見て取れる。同社は2012年度のIT予算を、「2011年度と同じかやや上回る水準でのプラス成長」と予想する。

 調査を手掛けた舘野真人シニア・アナリストはこう指摘する。「2012年度のIT投資は、国内景気が低迷すれば、低成長にとどまりそうだ。消費マインドの悪化を懸念する企業が多い」。

 明るい兆しは見えているが、IT業界に垂れ込めた「雲」を晴らすには、投資対効果を実感させるようなITベンダーの提案が必要になりそうだ。