国内ユーザー企業の反発を承知の上で、海外ソフトメーカーが保守サポート料金やライセンス料金(ソフトそのものの料金)を値上げする真意は、どこにあるのか。保守サポート料金の実質値上げに対するユーザー企業の反応と、メーカーの言い分を見ていく。また、多くの企業が利用している「Microsoft Office」の内外価格差を調べてみた。

 様々な料金改定を図る海外大手ソフトメーカーの意図と、国内ユーザー企業の要望との間には、ズレが生じているのが実態だ。しかも、その差は広がるばかりである。

この10年でシステム予算比率は半減

 多くのユーザー企業は、保守サポートサービスの値下げを切望する。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調べによれば、民間企業の売上高に占めるシステム予算の比率は、2000年度には2.66%だったが、2010年度は1.18%に下がっている。限られたシステム予算でのやり繰りを強いられているユーザー企業にとって、値上げはダメージとなる。

 「サービス内容が変わらないのに、料金は上がる。経営陣にシステム予算の増額を求めても了承を得られない」。ミツカンの情報システム会社、みつかんの竹嶌敏雄管理本部情報システム部システム管理課課長は、日本オラクルの更新時調整料金について憤る。ミツカンは、データベースソフトの「Oracle Database」やERP(統合基幹業務システム)パッケージ「E-Business Suite」など、多くのオラクル製品を使っている。

 「サービスの内容は修正プログラムの提供とトラブル対応だけでよいから安くしてほしい」というのは、多くのユーザー企業が口にする台詞だ。

 例えば、SAPジャパンの保守サポートサービスについては、内容が値上げに見合わないとして、値上げした上位版の「Enterprise Support(ES)」ではなく、料金据え置きの下位版「Standard Support(SS)」を選ぶ企業も存在する。

図1●保守サポート改定に関するソフトメーカーの狙いとユーザー企業の要望
図1●保守サポート改定に関するソフトメーカーの狙いとユーザー企業の要望
現状は両者の間のズレが拡大している。
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 「ESで実現できるとするコスト削減策は、具体性を欠く内容ばかりだった」。ある化学メーカーは、ESのサービスとして提案を受けた、SAPジャパンからのサービスレベル改善策を、こう切り捨てる。同社は結局、ESではなくSSを選択した。

 一方、ソフトメーカーが保守サポート料金を改定する狙いは、三つに集約できる(図1)。