ドラゴンフライは、英語で「とんぼ」を意味する。とんぼが四枚の羽を自在に動かして空を飛ぶように、目標を実現するためにソーシャルメディアを活用する方法を解説する。著者は「焦点(Focus)」「注意(Grab Attention)」「魅了(Engage)」「行動(Take Action)」を四枚の羽に例え、ぴったりとそろうことが重要だとする。この四つが連動するとソーシャルメディア上で素晴らしい成果を出すことができ、お金や権力がなくても明確な目標と通信手段さえあれば、社会を変えるようなインパクトを与えられると説く。
第一の「焦点を絞る」では、バラク・オバマ米大統領の選挙戦略を例に挙げ、どのようにソーシャルメディアを駆使して成功したかを、丁寧に説明する。
第二の「注意を引く」では、ソーシャルメディア上で効果的に注目を集めるための四原則を説明する。「私的に」「驚きのあることを言い」「メッセージを視覚化」して「感覚に訴える」ことが大事だという。
著者が最も難しいとするのが、第三の「魅了する」だ。ソーシャルメディア上で深い関心を得るだけでなく、場合によっては、愛してもらうことすら必要になるからだ。個人間の小口融資を仲介する非営利団体「Kiva」に加え、日本のクックパッドの事例が紹介されているのはうれしい限りである。第四の「行動を起こさせる」では、小児がんの根絶を呼びかける米国の非営利団体「アレックス・レモネードスタンド基金」を紹介する。四つの羽のすべてがそろった感動的な活動だ。この物語を読むだけでも、十分に参考になるだろう。
本書は米スタンフォード大学で人気講座を抱える心理学者と、テクノロジー分野のマーケティング専門家が共同執筆した。非常に分かりやすくソーシャルメディアの活用法が書かれているだけでなく、個人の社会貢献やCSR(企業の社会的責任)についても考えさせられた。ソーシャルメディアの世界に正しく参加し、とんぼのように自由に飛び回れるよう、多くの人に読んでもらいたい。
ドラゴンフライ エフェクト
ジェニファー・アーカー/アンディ・スミス著
黒輪 篤嗣訳
阿久津 聡監修
翔泳社発行
2100円(税込)