ARMプロセッサの命令セットなどのアーキテクチャは、英国ARM社が開発しているのは以前解説した通りだ(関連記事:スマートフォンやタブレットのプロセッサとは)。現在多くのスマートフォンやタブレットにはCortex-A系列と呼ばれるプロセッサが使われている。このCortex-A系列のプロセッサのアーキテクチャがARMv7である。このARMv7アーキテクチャは、32bitのデータやアドレスを扱う32bitプロセッサである。

64bitアーキテクチャとなるARMv8-A

 2011年10月27日、英ARM社は米国で開催された開発者向けイベントで、64bitアーキテクチャとなるARMv8-Aを発表した。ただし、今回の発表は次世代の方向を示したのみで、ARMv8-Aの詳細については別途発表を行い、最初のプロトタイプが登場するのは2013年以降である。その後、具体的な設計が登場することになる。つまり、64bit化するのは、2015~2016年頃であり、すぐにスマートフォン/タブレットのプロセッサが64bit時代に入るわけではない。なお、一般に64bitアーキテクチャとは、CPU命令が扱うデータやアドレスが64bitになっているものを指す。

 ARMが次世代で64bit化することは大きな意味を持つ。一つは、応用分野が広がること。大量のメモリーを搭載できるため、サーバー系などへの応用が可能となる。もう一つは、モバイルデバイスなどの既存の市場での上位クラスの製品への搭載だ。

 例えば、次期WindowsであるWindows 8はARMプロセッサに対応するが、プロセッサのカテゴリとしてはSoCと呼ばれる32bit製品のグループとなる。このクラスのプロセッサは、モバイルを指向したタブレットなどがメインの搭載製品となる。

 この上には、インテルなどの64bitプロセッサが使われている64bit製品のグループがある。このグループは、現在のノートPCなどの領域をカバーするメインストリームでもある。ARMプロセッサが64bit化することで、このメインストリーム製品への進出が可能になり、ノート型などにも進出することになるだろう。

 なお、ARMv8が登場しても、ARMv7は終わりになることはなく、しばらくは進化が続くことになる。純粋な32bit CPUが使われる領域は当面続くと考えられるからだ。今回発表されたARMv8アーキテクチャは、アプリケーションプロセッサ用のみのもので、現行のARMプロセッサがカバーしている組み込み用途やリアルタイム用途向けのARMv8アーキテクチャは含まれていない。この分野は、64bit CPUを必要とするような用途はかなり少ないと考えられ、今後長期にわたってARMv7が利用されることになると考えられる。