KDDIの固定通信事業が営業利益を拡大している。2010年度に7期ぶりに通年で黒字となり、2011年度も第1四半期、第2四半期と黒字幅を拡大している。第2四半期決算では固定通信事業の営業利益が321億円となり、上期までに年間の利益目標である400億円の約8割を達成した。収益拡大の背景について、KDDIに聞いた。

 収益拡大の主な要因には、基幹系ネットワークにおけるコスト削減があるという。合併を繰り返したKDDIの固定通信事業には、古くは国際系のネットワークに始まり、テレウェイ、DDI、セルラー、IDO、auといった複数の通信ネットワークが共存している。現在ネットワークの統合に向けて局舎整理や基幹系の整理を行っており、こうした取り組みの成果が表れてきているという。統合にはまだ作業が残っていることから、コスト削減の余地はまだあるとKDDIでは考えている。

 固定通信事業は、FTTH事業とメタルプラス(直収電話、ADSLサービス)事業、ケーブルプラス電話事業、ケーブルテレビ(ジャパンケーブルネットが手がける放送、インターネット、電話)事業で構成している。このうち加入者数が伸びているFTTH事業においては、ユーザー宅内への引き込み回線(ドロップ)部分のコスト削減が収支改善に大きく寄与しているという。ここでは、引き込みに使う部材や手順の見直しによるコスト削減を行った。現在総務省で検討されている屋内配線の共用化などが進めば、さらにコスト削減も可能と見ている。

 第2四半期決算で営業利益が大きく上振れしているのは、震災の影響で回線を計画通り販売できず、そこで浮いた販促費が要因の一つと説明する。下期は、上期にFTTHサービスの提供を開始した中国、四国、九州地域のほか、シェアドアクセスによる新規エリアの拡大も予定している。こうした地域で販売促進を強化することから、通期営業利益予想の上方修正は見送った。今後はFTTHサービスの提供エリア拡大と併せて、auショップでのFTTHサービスの販売など、販売網の整備にも注力する。

 FTTHの純増数は、第1四半期の8万7000件に対して第2四半期は8万3000件と若干落ち込んだ。この要因についてKDDIは、7月24日の放送のデジタル化に伴い、FTTHでデジタル放送の再送信サービスを提供している中部テレコミュニケーションの販売分が第1四半期にシフトした反動と見ている。「第2四半期はもともと季節要因で販売が落ち込む時期。auひかり単体では第1四半期よりも販売数は増えており、順調に伸びている」と説明した。

 なお、KDDIは2011年度上期までに、九州、中国、四国といった西日本地域を中心にauひかりのサービス提供エリアを拡大した。下期も引き続き提供エリアを拡大し、戸建て向け提供エリアで現在約40%にとどまる世帯カバー率を、2012年の春をめどに約70%まで向上させる方針である。サービスを拡大するエリアとしては、「主な県庁所在地は提供済みで、今後はそれに続く各地の第2都市での提供を進めたい」(KDDI)という。

 販売促進策として、地域別に各種キャンペーンを展開する。通信速度が最大1Gbpsの料金メニュー「ギガ得プラン」は、「コストパフォーマンスの高い料金設定で、他社サービスに十分対抗できる」と考えていることから、全国同一価格で提供する。ただし、地域ごとに異なるキャンペーンを導入することで、その地域の競争環境に合わせた販売を行う。提供エリアの拡大によって、ニーズがあるのにリーチできなかったユーザーを獲得し、契約者純増数の拡大に繋げたい考えだ。