大和ハウス工業の石橋民生代表取締役副社長(写真:北山宏一)
大和ハウス工業の石橋民生代表取締役副社長(写真:北山宏一)
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 大和ハウス工業は会計や人事などの基幹業務システムの再構築を進めている。稼働は2013年4月の予定だ。同社のCIO(最高情報責任者)である石橋民生代表取締役副社長は、このシステムの開発を進めるに当たり、従来とは異なるプロジェクト管理手法を採り入れた。主人公が思考プロセスを変えることで工場再建に成功する物語を描いた『ザ・ゴール』。このビジネス小説の著者、エリヤフ・ゴールドラット氏(故人)が考案した「CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)」である。

 石橋副社長が新たな手法の採用を推進したのは、「従来のシステム開発プロジェクトでは開発にかかるリードタイムが長くなりがちだった」という問題意識を持っていたため。個々の部門の連携が取れておらず、手待ちの時間や作り直しといった問題が発生していたと振り返る。このような無駄な時間を取り除くために、「CCPMが有力な手法だ」と石橋副社長は考えた。

 システム開発プロジェクトは一般に、要件ごとに担当者を決めて分担作業で進める。この時、個々の担当者は自身の担当を確実に期間内に完了させるために時間の余裕、“サバ”を求めがちだ。これらのサバが積み重なると、プロジェクト全体のリードタイムが間延びする原因となる。

 CCPMでは各担当者が持つサバを取り除き、集約する。各担当者の作業日時を短く設定して、できるだけ早めにプロジェクトを進行させる。途中で改善や人員の追加をしながら完成させる。担当者レベルでは余裕がなくなるが、プロジェクト管理者は進捗状況を早めに把握・改善でき、最終段階で慌てることが少なくなる。プロジェクト全体の進行を妨げる要因となりうる問題には、多めに人を割り当てるなどの対策を講じることで、リードタイム短縮が図れるわけだ。

 もちろん、たとえ優れた手法であっても使いこなせなければ効果は発揮しない。そこで石橋副社長は開発プロジェクトに先立つ2010年8月、プロジェクト関係者を率いて米国のサンノゼに渡った。CCPMの運用ソフトを提供するベンダーを訪問。ソフトの使い方だけでなく、進捗ミーティングの開き方などの運営ノウハウをみっちりと学ばせた。

 この事前準備の効果もあり、基幹業務システムの開発は順調に進んでいるという。例えば開発に要する日数を90営業日と見積もっていたある要件は、実際には65営業日で完了させることができた。今後も別のプロジェクトにこの手法を取り入れる考えだ。

Profile of CIO

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと
・利用者の言いなりにならないで、的確な助言もしてほしい
・利用者と利益を共有してウィン-ウィンの状況を作ってほしい
・カスタマイズで儲けようとしないでほしい

◆普段読んでいる雑誌・新聞
・日本経済新聞
・産経新聞

◆最近読んだお薦めの本
・『クリティカル・チェーン なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』(エリヤフ・ゴールドラット 著、三本木亮 訳、ダイヤモンド社)
・『ザ・チョイス 複雑さに惑わされるな!』(エリヤフ・ゴールドラット 著、岸良裕司 監修、三本木亮 訳、ダイヤモンド社)
・『ザ・クリスタルボール 売上げと在庫のジレンマを解決する!』(エリヤフ・ゴールドラット 著、岸良裕司 監修、三本木亮 訳、ダイヤモンド社)
・『ザ・ベロシティ 製造業・起死回生のシナリオ』(ディー・ジェイコブ/スーザン・バーグランド/ジェフ・コックス著、三本木 亮 訳、ダイヤモンド社)

◆ストレス解消法
・フィットネス、車