今回は、第13条の「グリーンITを研究せよ!」について説明します。これも、旧十四か条にはなかった項目ですが、3月11日の震災以後、このテーマはますます重要になってきています。これまでは、地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出を減らす目的で推進してきましたが、震災後は電力そのものが不足し、緊急の課題ともなりました。

 私は2005年まで勤めた佐賀市長の時代に徹底した省エネに取り組み、佐賀市役所から排出される二酸化炭素の量を2003年(平成15年)時点で大幅に減らしています。ナトリウム硫黄(NAS)電池という大型の蓄電池を導入して夜間電力を活用する方法により、電気代も50%以上削減しました。

 佐賀市長退任後は、友人が経営するESCO(Energy Service Company)事業の設計や空調の自動制御を行うシステムを販売している省エネ事業の会社も手伝っており、自治体の皆さんにはいろいろとお伝えしたいことがあります。今回は、主に市庁舎内のIT機器の省エネについて説明します。

省エネは電気使用量の細かい測定が基本

 省エネの話をすると、どのPCの電力消費量が少ないとか、いやシンクライアントがよいとか、ハードウエアの話にいきなり飛んでしまう人がいます。しかし、これではあまりうまく行きません。まずは、フロアーの主要な部門ごとに、どの程度の電力を使っているかを最低30分ごとにデータを測定していく必要があります。

 というのは、オフィスには、主に三つ、大きく電力を使う分野があります。空調関係、照明関係とコンセント関係です。IT機器はこのコンセント関係の一部です。測定の結果、空調関係のエネルギー使用状況が非効率で改善の余地があるということになれば、当然ですが、グリーンITよりも優先して取り組まなければなりません。

 公務員も人員削減が進み、なにもかも同時に進めることは非現実的です。どこに人的資源を投入すべきかという大きな判断を幹部が下すためには、フロアーごとに主要な分野がどの程度電力を使っているかを時系列で判断する必要があります。これから特に重要になるピークカット対策の基礎資料にもなります。

 財団法人省エネルギーセンターのホームページによると、オフィスの部門別エネルギー消費割合は、下ののようになっています。照明の割合が40%と、かなり高いことがわかります。IT機器は、コンセントの中に含まれます。この割合は、建物の建造年度や地域によっても変化します。省エネ計画をきちんと立てている自治体は、このような部門別のエネルギー消費のデータは持っているはずです。できれば、フロアーごとにデータがあるとよいでしょう。

図●オフィスビルの部門別エネルギー消費割合<br>空調負荷、照明、コンセント、換気などで消費した1次エネルギー(燃料・熱・電気)の割合を示した。 延べ床面積3万5000平米程度のビルの例。オフィス専有部の面積比は52.6%。グラフ内の数字は%
図●オフィスビルの部門別エネルギー消費割合
空調負荷、照明、コンセント、換気などで消費した1次エネルギー(燃料・熱・電気)の割合を示した。 延べ床面積3万5000平米程度のビルの例。オフィス専有部の面積比は52.6%。グラフ内の数字は%
出典:省エネルギーセンターのサイト
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 オフィスごとの主要部門のエネルギー使用量を効率的に測定するには、「省エネナビ」という装置を使うのが便利です。主要部門ごとに、15分や30分ごとの電力使用量データを保存してくれます。中には、携帯電話のパケット通信を利用して、リアルタイムでパソコン上のグラフとして見ることができる製品もあります。大手の金融機関などが、自社のオフィスに導入しています。

 次に、各課で、どの機器がどの程度の電力を使っているかを実測します。いろいろな測定用の装置が売られていますが、たとえばサンワサプライが販売する「ワットチェッカー」は価格も手ごろです。1個1万円以下で買えるので、何個か買って、順番に機器を測定していくとよいでしょう。

 実際に計測してみると、使用電力がカタログのデータとは少し違っていることや、使っていない時の待機電力もわかります。このパソコンをつけっぱなしで帰宅したら、電気代が一晩で何円かかるのかなど、まず現状を知ることが基本だと思います。

 できればあるとありがたいものが、IT資産管理台帳です。パソコンやサーバーがどこにどれだけあるかを把握しておくと、後で具体的な対策を打つときにとても便利です。