ユーザー企業との打ち合わせにて
ダメな“システム屋”の会話 ダメな“システム屋” 「以上が、我々の考えたベストの案です」
ユーザー企業マネジャー 「うーん。この案の第1のポイントはゼロからシステムを構築するということだと思いますが、パッケージソフトやクラウドサービス利用という選択肢はないのですか?」
ダメシス 「検討しましたが良いものがありませんでした。長期的に見ればむしろ割高になります」
ユーザー 「いや、コストだけの問題じゃないと思うけど。質問を続けますが、第2のポイントは要件定義に4カ月かけるということですが、どうしてこんなに長いのでしょうか」
ダメシス 「4カ月がベストです。2.5カ月でまとめる中間報告を検証していただき、4カ月で確定させます」
ユーザー 「逐次検証を進めて、全体を短縮する案もありそうなものだけど。第3の質問は、現場と本部でデータベースを別々に持つ構成についてですが・・・」
ダメシス 「レスポンスタイムなどシステム性能を考えると、この方式がベストです」
ユーザー 「この案、他の構成もあり得ると思うのですが?」
ダメシス 「色々な方式を検討しましたが、これがベストの案です」
ユーザー 「本当にそうですか?(誰にとってのベストなのかな・・・)」
ダメシス 「自信を持ってお勧めします。これがベストですから、他の案はありません」
ユーザー 「他の案はないのですね。そうしたら、違う考えを持つ人からも提案をもらわないとな」
ダメシス 「えっ!?」

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ダメな理由:誰にとってのベスト?

 私はITベンダーやユーザー企業、フリーランスのコンサルタントなど立場を変えながら、33年間“システム屋”を続けています。この間、“システム屋”以外の多くの人から、“システム屋”に対する印象や、感想を何度聞いたか分かりません。

 最も多かったのが「視野が狭い」「思い込みが激しい」「頑固である」といったものでした。こうしたコメントに至るまでには様々な理由があるでしょう。ただ、上のエピソードにあるように、自分がベストと考えた案をやや強硬に推薦する姿勢が一因ではないでしょうか。

 ベストの案を結論づける過程では、他の選択肢についても検討するのが普通でしょう。複数の案について客観的に長所・短所を比較し、何を優先するからそれがベストだと考えられるかという論理が必要です。

 こうした検討を事前にきちんとしていれば、「なぜそれがベストなのか」と問われた時に、他の選択肢を紹介したうえで、推薦する案がベストであることを聞き手に理解してもらうことができます。そしてそのような双方向のコミュニケーションを進めれば、相手からから「視野が狭い」とか、「思い込みが激しい」といった批判を浴びることもないはずです。