企業が情報システムを構築する際にクラウドコンピューティング・サービスを活用する動きが本格化してきたが、ハードウエアとソフトウエアを適切に組み合わせてクラウドシステムを作り上げるのは簡単ではない。今回は、最新のクラウド技術を手軽に素早く利用できるようにするコンピュータ製品のコンセプト「オープンメインフレーム」を見ていく。

 企業が最新のクラウド技術を活用して情報システムを即座に立ち上げる。それを強力に支援するのが、IAサーバーなど業界標準のハードウエアやソフトウエアをあらかじめ組み合わせて提供するパッケージ型製品だ。日経コンピュータでは、クラウドシステムの構築に適したこの“オープン”なコンピュータ製品を「オープンメインフレーム」と呼ぶ。

 海外ベンダーを追いかけるように、国産勢がオープンメインフレーム製品の品ぞろえを充実させるなか、実際に導入し、省力化というメリットを実感する国内ユーザーが出てきた。

■検証済みが生むスピード

 「2カ月という短期間で(鳥取県庁向けの)クラウドサービスを立ち上げるには、パッケージ型製品の利用が得策だった」。鳥取県情報センター 運用サービス部の兒島誠副部長は、「Vblock」を選んだ理由をこう話す。Vblockは、米シスコシステムズのサーバーやネットワーク機器、米EMCのストレージ、米ヴイエムウェアの仮想化ソフト「VMware」を1筐体に収めたオープンメインフレームだ(図1)。

図1 鳥取県情報センターは「Vblock」でクラウドサービスを提供
図1 鳥取県情報センターは「Vblock」でクラウドサービスを提供
サーバーやストレージ、ネットワークがあらかじめ最適に組み合わせてあったため、2カ月という短期でクラウドサービスを構築できた。
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 鳥取県は、2010年4月に取りまとめた「鳥取県情報システム全体最適化計画」に基づき、県庁内のサーバーをクラウドサービスに移行する方針を打ち出した。サービスインの予定は同年9月。業者決定の7月からは2カ月しかなかった。受注した鳥取県情報センター 営業企画部の奥田敏行部長は、「県庁内の200台のサーバーだけでなく、広く一般にもサービスを提供したい」と話す。

 Vblockを使ったクラウド構築は急ピッチで進み、「8月のお盆明けに納入されてから、2日間のセットアップ作業で、仮想マシンの立ち上げまで終えた」(兒島副部長)。サーバーやストレージ、ネットワークに推奨値が設定されていて、しかも事前検証されている効果が大きかった。

 鳥取県情報センターが導入したのは、Vblockシリーズの最少構成版である「Vblock0」。2台のシャーシーに、シスコ製のブレードサーバー「UCS」を11台収納、EMC製ストレージの容量は16テラバイトだ。Vblock0の標準価格は3000万円から。「自分でハードやソフトを組み合わせた場合と比べて、価格差は小さい」(兒島副部長)。

 奥田部長は、短期導入のほか、ワンストップの安心感をVblockのメリットとして挙げる。「完全なパッケージ製品なので、故障時にはハード、ソフトを問わず、原因を切り分けてもらえる」。

 同製品を使いこなすためのトレーニングも、ワンストップで提供された。鳥取県情報センターのメンバーは半年ほどをかけ、「仮想サーバー(シスコのUCSサーバーとヴイエムウェアのVMware vSphereの組み合わせ)の技術管理者育成トレーニング」「システム移行支援」「技術問い合わせ対応」といった、メーカー提供の研修を受けた。奥田部長は「クラウドを運用できる人材を育てられた。将来の仕事につながりそうだ」と期待する。