「ビッグデータ」の台頭で、これまで不可能だと思っていたことを実現できる、そんなIT(情報技術)が続々と登場している。ビッグデータとは、従来のコンピューティング技術では短時間で収集・解析するのが難しい、膨大な量のデータのこと。グーグルの検索サイトやTwitter、Facebookなどビッグデータを扱うサービスが普及し、それらを支える最先端のITが身近なものになってきたのだ。今回は、ミリ秒単位の超高速データ解析処理が可能な「オンメモリーDB(データベース)」技術に迫る。

 ミリ秒という高速なIT基盤が一般企業でも手に入るようになった――。

 証券会社の注文に2ミリ秒で応答する、東京証券取引所の株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」(図1)。開発元の富士通が、その高速処理を支える中核のDBソフトの市販化に踏み切った。

図1 東京証券取引所が株式売買システムに採用したPrimesoft Serverの概要
図1 東京証券取引所が株式売買システムに採用したPrimesoft Serverの概要
現用サーバーのログを待機サーバーに転送することで、データや処理内容を完全に同期させている。障害時にはすぐ待機サーバーに切り替えられる。
[画像のクリックで拡大表示]

 2011年6月に販売が始まった富士通の「Primesoft Server」は、データ全体をコンピュータのメモリーに置くことで処理速度を高めたオンメモリー型の超高速DBだ(表1)。処理速度に加え、数秒の取引停止も許さない耐障害機能を備える。

表1 大量データ処理向けのオンメモリーDB製品の例
表1 大量データ処理向けのオンメモリーDB製品の例
[画像のクリックで拡大表示]

 サーバー1台当たりのライセンス料は650万円と高価だが、PC(パソコン)サーバー(富士通製)で動作するなど「一般企業でも十分に導入・運用できる製品」(富士通)という。

■高速処理で顧客を集める

 東証の取り組みに呼応し、システム高速化の波は証券会社に広がっている。ネット証券のカブドットコム証券は2010年8月、証券取引を1秒以内で取次ぐ時間保証型サービスを始めた。「東証がシステムを高速化するメリットを、一般投資家にも還元した」と阿部吉伸事務・システム本部長は狙いを話す。

 そのために採用したのが、オンメモリー型の超高速DBである米ジェムストーン・システムズの「GemFire」。阿部氏は「従来のDBでは3秒以下に縮めることは困難だった」と説明する。