オープンソース関連コミュニティが共同で開催するイベント「オープンソースカンファレンス(OSC) 2011 Tokyo/fall」が、2011年11月19日と20日の2日間、開催された。併催された、OSSと政府・自治体をテーマにした「OSC2011.Goverment」では、被災地や汎用機ダウンサイジング、消防局でのOSS活用などが紹介された。また“地図のWikipedia”OpenStreetMapの日本初となる自治体による活用事例も報告された。

写真●OSC2011.Govermentの模様
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被災自治体ITの“プロジェクトX”

 IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)国際標準センター非常勤研究員/マーケット分析WG 主査の岡田良太郎氏は「第5回自治体IT調査の進捗~災害後の被災地訪問を通して見えたもの」と題して講演。自治体IT調査は、正式名称「地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性に関する調査」。IPAが2006年度から実施している調査だ。

 今回、岡田氏は被災した岩手県などの自治体もヒアリングした。

写真●IPA 国際標準センター非常勤研究員/マーケット分析WG 主査の岡田良太郎氏

 天災の緊急時といえども、死亡届を始めとして、情報システムが動かなければ役所の業務は遂行できない。宮古市の市役所は津波に襲われ1階が水没。サーバーのある2階も床に水が来たものの、サーバー自体は無事だった。しかし送電網はズタズタで電気が来ない。市役所からサーバーをラックから外して持ち出し、合併前の町役場などの施設に移し、地震発生後48時間でサービスを再開した。

 岩手県では、沿岸部の多くの市町村でサーバーが水没した。市町村の住民データは無事だった県庁のサーバーにも保存されていたが、住民データは市町村外で印刷できないという規制がある。そこで市町村外での印刷を認める条例を、県議会で3日で通し、印刷して県職員が被災した市町村に人出で運んだ。

 大槌町でもサーバーが水没。しかしサーバーから取り出したハードディスクをデータサルベージにかけると、なんとデータがほぼすべて復旧できたという。またある自治体では、金庫にバックアップメディアやダンプリストを格納していた。水が引いたあと金庫を空けてみると、そこには無事津波を乗り越えたメディアと紙があった。

 岡田氏は岩手大学 工学部教授 西谷泰昭氏へのインタビューを紹介した。同大では、全国のさまざまな企業、大学、個人などからパソコンを約700台集め、それらすべてにOSをインストールし直して被災地の自治体、避難所、小中学校、漁協などに提供した(プロジェクトのブログ)。

 「現場の人たちはくじけない。このような『プロジェクトX』のような奮闘があちこちで行われていた」と、岡田氏は語る。