ここアメリカは世界一の先進国でありながら停電が実に多い。先日、2011年9月8日の午後5時にも、筆者が勤務するロサンゼルスから車で2時間ほどの距離にあるサンディエゴを中心とする地域で大規模停電が発生した。

 このときの第一印象は「またか」といった程度だった。というのも、2011年に入って既に5回前後は、自分の事務所でも停電が起きているからだ。すると、サンディエゴに外回りしていた部下から、「一帯が停電していて復旧の見込みがない。信号も停止して、交通は麻痺している」という連絡が入った。さらにインターネットのニュースを見ると、南はメキシコ、東はアリゾナ州までと非常に広域に停電しており、影響が大規模なものだと気付かされた。

 復旧にかかった時間も早いところで6時間、場所によっては10時間以上と、長期化した。前述の部下が自宅に戻れたのも、結局、深夜だった。

大規模停電が障害対策の意識高める

 夏場のこの時期、米国でも日本と同様、電力消費量が全般に高くなりやすく、小規模の停電は全米各都市で時折発生している。たいていは1時間もすれば復旧するケースが多いのだが、大規模停電もしばしば発生する。

 8年前の2003年8月には、米国北東部のニューヨークを含む米国8州と、カナダ・オンタリオ州が29時間に及ぶブラックアウトに陥った。当社のデータセンター「TELEHOUSE NEW YORK Teleport」も、その影響が及ぶエリアにあった。ただ、2系統の商用電源と冗長化された自家発電設備によって、ハウジングしているユーザーには100%の電源供給ができた。

 このことがデータセンターを活用した事業継続計画(BCP)やディザスターリカバリー(DR)の事例として知られるようになり、その後の米国でのデータセンター需要を喚起する一因になったと言われている。今回、影響を受けたサンディエゴ一帯にも、多数の日系企業があるが、当社のユーザーに関しては、バックアップの防衛策を講じていたことで影響をミニマムにできた例が少なくなかった。

 しかし、今回の大停電については原因がまだはっきりしていない。急所となっている送電系システムの障害が指摘されているが、まだ断定できていない様子だ。根本的な原因究明とその対策がおぼつかないままでは、今後も、いつ大停電が起こるか分からない。少なくとも、その覚悟は必要だろう。

 こうした事態に備えたDRやBCPは、通信事業者、データセンター、システムインテグレータと3通りの顔を持つKDDIが強みを発揮できる領域でもある。昨今は、クラウドサービスを絡めた災害対策のプラン立案を求められるケースが多い。ますます引き合いは増えそうだ。

宮崎 浩彰(みやざき ひろあき)
KDDIアメリカ 西海岸・太平洋地区担当ダイレクター。2005年4月からニューヨークに赴任、2010年4月より現職。赴任までの約10年間は国内で営業企画、サービス企画などを担当。晴れて米国勤務の希望がかない、現在は青空とヤシに囲まれたロサンゼルス支社に勤務するが、毎日事務所にこもっての残業続きで複雑な心境。