今、ジャカルタは建設ラッシュだ。巨大モールや高層オフィスビル、高級アパートが次々と建設されている。
海外から大量の資金が流れ込み、インドネシア現地で多くの外資企業がビジネスを拡大しているのが一因だ。インドネシアが保有する多くの天然資源や、2億3000万人という世界第4位の人口が、巨大マーケットとして注目を集めている。1人当たりGDPは3000米ドルの大台に達し、個人消費の旺盛さも目立ち始めた。
例えば、インドネシア人に人気のある日本食レストランは、週末になると行列ができる。当社のビルに入居しているしゃぶしゃぶ屋では、平日のランチタイムにもかかわらず、多くの客が一皿数千円の肉を食べているから驚く。
一方、見た目の派手さに比べ、社会インフラはもろく、整備が全く追いついていない。特に交通渋滞はすさまじく、夕方頃のジャカルタ市内では、割と近くに見えるビルまで移動するのにも30分かかるほどだ。
大渋滞は、90年代に筆者が駐在していたタイのバンコクでも見かけた。雨が降ると道路が冠水し、通常は15分のところを2時間半かかることもあった。今のジャカルタがそれと大きく違うのは、走っている車の大部分が新車であること。当時のバンコクでは、多くは10~20年選手の中古車だった。こんなところにもインドネシアマーケットの勢いがうかがえる。
スマートフォンに親和する国民性
ICTにおける状況もこれに似てギャップが激しい。旺盛な購買力を背景に最先端機器やサービスへの需要が増大しているが、それを支えなければならないインフラは極端に脆弱だ。
例えば固定回線は、1Mビット/秒をブロードバンドと呼ばざるを得ない状況。家庭でのパソコン普及率も5%と非常に低い。
ところがその一方で、スマートフォンは爆発的に増えている。携帯電話の契約者数は1億8000万といわれ、普及率は70%超。BlackBerryの出荷台数も世界有数。フェイスブックのユーザー数は4000万以上で世界第2位、Twitterは世界第3位である。
元々インドネシア人はフレンドリーでおしゃべり好きな国民。スマートフォンを使ったソーシャルネットワーキングは、かっこうのコミュニケーションツールなのだ。
こうした土地で当社は、1990年より20年にわたってICTサービスを提供してきた。2001年にはインターネットサービスを開始し、主要ビルや工業団地に24時間監視体制のアクセスポイントを設置するなど、常にこの脆弱なインフラと戦ってきた。2011年からは自ら光ファイバー回線を敷設し、より安定的な高速データ通信サービスを提供する準備を進めている。