スマートフォンの急拡大で、国内の携帯電話事業者からパケット定額制の見直しを示唆する発言が出てきた。しかし料金競争がある中で、ユーザーの反応を考えると、上限額撤廃にはリスクもある。ユーザーに受け入れられやすい策は何か。Xi(クロッシィ)への移行を積極化したNTTドコモを筆頭に、試行錯誤が始まっている。

 パケット定額制見直しの可能性について、日経コミュニケーションがモニター読者に対して実施したモバイル定額制の利用状況についてのアンケートでは、大半は定額制の撤廃に異を唱えている。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルに定額制の存続について尋ねると、3社はともに「様々な可能性を探っている段階で、何も決まったものはない」と答える。料金競争の中で、自社だけが先に上限をなくすとは言えず、互いに出方を注視しているのだ。

図1●モバイルデータ通信の利用者は約8割に達する<br>スマートフォンだけでなくデータ通信カード、携帯電話のパケット通信など利用形態にかかわらず利用中の契約プランについて回答してもらった。
図1●モバイルデータ通信の利用者は約8割に達する
スマートフォンだけでなくデータ通信カード、携帯電話のパケット通信など利用形態にかかわらず利用中の契約プランについて回答してもらった。
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 課金の上限がなくなれば、ユーザーは安心してコンテンツサービスを利用しにくくなる。また、企業ユーザーでは変動するコストを嫌うケースも少なくない。「予算を管理しやすい点は企業ユーザーにとって重要。上限額がなくなれば解約するユーザーも出てくるだろう」(ソフトバンクモバイルの森村徹太郎法人プロダクトサービス統括部サービス企画部商品企画2課長)。

 定額制を利用しているユーザーのボリュームは大きく、ユーザーが離れることになると、その影響は大きい。本誌のモニター調査結果では、定額制および準定額制を利用しているユーザーはモバイル通信利用者全体の約7割に達している(図1)。

 それほど多くのユーザーに通信量を気にせずに使うスタイルが浸透している状況では、「通信サービスの内容が同じまま上限をなくすことに納得してもらうのは無理だ」(KDDIの長谷川渡コンシューマ事業企画本部次世代ビジネス戦略部3Mビジネス戦略グループリーダー課長)。

「料金が下がるなら見直しも可」

 とはいえ、トラフィックが加速しながら増え続けていることを考えれば、将来を見据えて料金体系を見直すことも視野に入れておく必要がある。大多数の標準的な通信量のユーザーの通信環境を快適に保つという視点もある。そのためには、過度にリソースを占有する一部のヘビーユーザーに一定の負担を課すことは重要な方策になる。

 またユーザーの間にも、へビーユーザーと標準的なユーザーの間の料金負担の格差を是正しないことが、定額料金が高止まりする要因になっているとの認識が広まりつつある。このことは前述の本誌アンケートの結果からも分かる。「標準的な通信量のユーザーが支払う料金が今より下がるとしたら、どのようなヘビーユーザー対策が適切か」と尋ねたところ、「通信量の多い上位1~2%のユーザーに対し、今より高い上限金額を適用」とする回答は51.3%と半数を超えた。

 特に企業ユーザーは、ほとんど日中の業務にしか使わない。通信量も月間1Gバイト以下に収まるユーザーが大半である。自由回答にも「契約回線全体で、無料で通信できる量を繰り越したり、シェアしたい」「もっと料金を抑えられるよう選択肢を増やしてほしい」と現行水準よりも低い上限設定を求める声が寄せられた(表1)。

表1●自由回答欄に見られたコメントの代表例
表1●自由回答欄に見られたコメントの代表例
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