シリコンバレー以外で、スタートアップが繁栄している地域は多くない。その原因の一つが、行政の理解不足だとブランク氏は指摘する。同氏は起業スタイルを6個に分類、スタートアップを育成したいなら、まずその違いを認識すべきだとした。(ITpro)

 海外で教えるための準備をしながら、いくつかの国による、アントレプレナーシップを始めるための野心的な取り組みを調査するのに一週間を費やしました。膨大な報告書、白書、提案書などに目を通した結果、二つの結論に達しました。

1)彼らは紙の原材料となる、貴重な樹木を無駄にしました

2)一つの特例を除いて、行政のアントレプレナーシップ政策と試みは最適とは言えず、資金の活用は非効率的です。なぜでしょうか。それは、行政が「スタートアップ企業とは何か?」「アントレプレナーとは誰か?」「スタートアップ企業によって、エコシステムがどのように異なるのか?」「公的資金と私的資金の役目の違いは何か?」という、スタートアップの基本について何ら定義しなかったからです

6種類の起業スタイルのどれを選ぶ?

 アントレプレナーは、起業にあたって6種類の組織のうちの一つを選ぶことができます。その6種類とは、「ライフスタイル型」「小企業型」「拡張可能型」「買収可能型」「大企業型」「ソーシャルアントレプレナー型」です。創業する人は誰もがアントレプレナーではありますが、以上の組織の違いを認識しなければ、社会政策が混乱します。それは、各組織を支えるエコシステムが極端に異なるからです。政策立案者がまずすべきことは、アントレプレナーが選ぶ6種類のいずれ組織を支援し成長させたいのか、順序だてて考察することです。

ライフスタイル型スタートアップ:自分の生きがいのためのビジネス

 私が住んでいるカルフォルニアの海岸地区には、小さな店を持つサーファーやダイバーが、サーフィンやダイビングを教えて生活の糧を得ることで、自分たちはサーフィンやダイビングに没頭できるというアントレプレナーがいます。ライフスタイル型アントレプレナーは、自分の好きなことをして生活し、自分のためにだけ働く人です。

 同じように、シリコンバレーには、自分の技術を無上に気に入っている熟練フリーランスのプログラマーやWebデザイナーがいます。彼らは、自分たちの情熱のためにコーディングやUI(ユーザー・インタフェース)の仕事をする、まさにライフスタイル型アントレプレナーと言えます。

小企業型スタートアップ:家族の生活を支えるためのビジネス

 今日、米国におけるアントレプレナーとスタートアップ企業のほとんどすべてが小企業です。米国には小企業が570万社あります。これは、総企業数の99.7%にあたり、公務員を除く就労人口の50%がここに属しています。

 小企業とは、個人経営のスーパー、美容院、旅行代理店、インターネット・コマースのオンライン店舗、大工、水道工事、電気工事などで、自ら事業を運営している人たちです。彼らはシリコンバレーのアントレプレナーと同じように熱心に働きます。そして、その地域の人、あるいは家族を雇います。

 ほとんどの小企業は、ほんのわずかの利益が出る程度のビジネスを営んでいます。小企業のアントレプレナーシップとは、事業の拡張のためではなく、自分で事業を運営し、「家族を養う」ことを目的としています。彼らの資金源は、自らの貯金か、銀行や小企業向けの貸付金、もしくは親戚から借り入れる資金です。当然のことながら、小企業のアントレプレナーは億万長者にはならず、数々の雑誌の表紙を飾ることもありません。しかし、数から見ると、ほかの分類のアントレプレナーよりも圧倒的にアントレプレナーの代表的な存在であり、このような企業が地域の雇用を創出しているのです(図1)。

図1●スタートアップから小企業への移行
図1●スタートアップから小企業への移行