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 プレゼンは、なかなか上達しないのが悩ましいもの。上達を阻む理由の一つが、「そんなこと自分はできる、できているはず」という願望を含めたプレゼンター本人の勘違い。逆に言えば、この勘違いに気づいて変えようとするだけで、プレゼンは劇的に進化する。

 本連載では、復興をテーマに開催したアプリコンテスト「A3 Together」のファイナリスト10組が、リハーサルと本番の表彰式でいかにプレゼンが変わったか、共通する課題は何だったのかを紹介しよう(関連記事「A3 Together 決勝プレゼン&表彰式レポート」)。

 なお、リハーサルでプレゼンのコーチを引き受けてくれたのは、ベストセラー『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』巻末の解説を執筆したエバーノート日本法人 会長 外村仁氏と、A3 Togetherの発案者でもあるNTTドコモ スマートフォンコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室コンテンツ支援担当部長の山下哲也氏の二人だ。『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』の担当編集者がレポートする。

聞き手の頭の中はクエスチョンマークでいっぱい

 よくあるプレゼンが、長い説明を最後まで聞いても、何がしたかったのか、どんな内容なのかがわからないというものだ。「プレゼンがよっぽど苦手な人の話でしょ?」「自分はそんなことはない」と思うかもしれないが、A3 Togetherのリハーサルでは多くのプレゼンがそうだった。300を超える応募作品の中から10組として選ばれた作品だから、コンセプトや内容がよいアプリであることは間違いない。それなのに、結局どんなアプリかよくわからないという印象を聞き手に与えてしまうのは、非常にもったいないことだ。

 伝わらない理由は、「ひと言で内容を説明できていない」からだ。今回のプレゼンは、アプリのコンテストの審査だから、聞き手はどんな面白いアプリなのかを聞きたがっている。ところが、多くのプレゼンターは「アプリをどんな風に使えるか」という機能説明を順番に始めてしまう。アイデアをまとめたり、コードを書いたりした本人は、どんなアプリか知りつくしているためだ。しかし聞き手は「どんなものか?」がわからないまま使い方を一つずつ説明されるので、頭がクエスチョンマークでいっぱいになってしまう。こんなアプリなのではないかと想像しながら聞いてはいるものの、違うのではないかという不安が付きまとう。

ツイッターに書ける文字数のヘッドラインを作る

 では、プレゼンターはどうしたらよいのだろうか? リハーサルでプレゼンのコーチを担当した外村氏は、こうアドバイスをした。

「コピーライターになったつもりで、『このアプリは○○です』とツイッターに書ける140字以内でヘッドラインを作り、プレゼンの冒頭で説明してほしい」

 プレゼンの名手だったスティーブ・ジョブズは、必ず魅力的なヘッドラインを冒頭に打ち出した。iPodは「1000曲をポケットに」、MacBook Airは「世界で最も薄いパソコン」、iPhoneは「アップルが電話を再発明する」といった具合だ。こうしたひと言で何か表す言葉があると、聞き手は安心して詳細を聞くことができる。