自社の業務プロセスや現在の事業構造にぴったりフィットしたシステムを構築しよう――。こういう考え方は一見正しく思えるだろうし、ユーザー部門が喜べばシステム部門も満足だろう。しかし、めまぐるしい変化の中で「今の最適」が有効な期間はわずかだ。高度に作り込まれたシステムであるほど変化に弱い。将来を見渡して考えるなら、ジャストフィットのシステムを求めすぎてはいけない。本当に必要なのは、変化に強いアーキテクチャーの構築である。

 リーマンショックに起因する強烈なITコスト削減要求、TwitterやFacebookに代表されるコミュニケーション手段の変化、急速なクラウド化、ビッグデータの活用による新ビジネスの創造など、この2年ほどの間にも大きな変化の波がたくさん押し寄せた。皆さんの会社のシステム部門は、これらの大波を迅速に乗り越えたり、うまく乗りこなしたりしているだろうか。

 システム部門は、「ビジネスを変革する集団」=「ビジネス・トランスフォーメーション・オフィス(BTO)」として生まれ変わり、経営環境の変化に対応していくことが求められている。だが、システム部門にとって、“硬いシステム”が大きな重荷となっている。何か新しいことを手掛けようとしても、そこには改修が困難な“硬いシステム”がいつも立ちはだかるのだ。

 “硬いシステム”には色々ある。メインフレーム中心で特定ベンダーにロックインされた状態のシステムや、開発言語やデータベースがバラバラで、構造が“スパゲッティ状態”になってしまったシステムなどが挙げられる。利用現場の要求を最大限実現しようとしたあまり、仕様が複雑化してブラックボックスになったシステムもそうだ。

 「変化への対応に弱い」という問題は、システム部門を取り巻くあらゆる場面で悪影響を及ぼしている。とりわけ、最近は企業買収や部門売却・統廃合など、システムの大幅な変更を伴う企業活動が活発になっている。硬いシステムでは、タイムリーに対応するなど、とても無理だ。

 こうした問題を解消するには、システム統合や分割、変更を容易にする“柔らかいアーキテクチャー”を構築しなければならない。

 “柔らかいアーキテクチャー”の実現には、押さえるべきポイントがたくさんある(図1)。ここからは「アプリケーション」「データインタフェース」「インフラストラクチャー」という構成要素のそれぞれについて、詳しく解説していきたい。弊社が簡易診断を行う際に用いるチェックリストも載せたので、併せて活用してほしい。

図1●柔らかいアーキテクチャーを構築するためのポイント
図1●柔らかいアーキテクチャーを構築するためのポイント