IT企業がスマートシティ構築に向けて、自治体と提携する動きが活発になってきた。富士通と福島県会津若松市、日本IBMと秋田県秋田市、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と福島県いわき市などがそうだ。

 いずれも、震災後の都市像や電力事情の改善を模索する自治体の具体的な計画に基づくものだ。例えば秋田市は「あきたスマートシティ・プロジェクト基本計画」を策定。市内にある文化施設や学校などから、設備の稼働情報やエネルギー利用情報を集約するシステムを構築する。これを含め九つのプロジェクトを2016年3月末までの計画で進める。日本IBMは、この中の一つ「スマートシティ情報統合管理基盤の構築」プロジェクトに参画する。

 東京都のように、新たにスマートシティやスマートグリッドの構築に取り組む自治体も現れた。都は11月に東京・丸の内のオフィス街で、エネルギー管理システムを動かす。廃熱など、都心に多いオフィスビル特有の要因による影響を分析する。

 各自治体が具体的な計画を策定するのに併せて、ITベンダー各社も技術開発や体制作りを急いでいる()。

表●2011年10月以降に明らかになった、IT企業によるスマートシティ向けシステム構築の主な取り組み
EV:電気自動車  CEMS:地域エネルギー管理システム
表●2011年10月以降に明らかになった、IT企業によるスマートシティ向けシステム構築の主な取り組み

 CTCはスマートシティ構築の計画作りや運用を支援するクラウド「E-PLSM」を新たに開発。12月に稼働させる。いわき市や、長崎県佐世保市にあるハウステンボスが利用する予定だ。

 E-PLSMは、スマートシティの計画段階で設備や建物の稼働状況をシミュレーションする機能を備える。商業施設や工場、太陽光発電所などを意味するアイコンを画面の地図上に配置すると、その地域の過去の天候や発電実績のデータを基に、発電量やコストを自動的に算出する。CTCは、自然エネルギーを利用した場合の発電予測システムを電力会社に提供した実績がある。このノウハウをクラウド化し、自治体の具体的な計画策定に生かす。

 NECや富士通は、自治体向けの専門組織を設けた。NECは11月7日に「復興支援推進室」を設置。まずは被災した東北地方の自治体向けに、スマートシティ構築に向けた提案活動を強化する。富士通は10月に「スマートシティ推進室」を設置した。同組織を通じて、これまで事業部門ごとに提供していたスマートシティ向けのシステム構築案件や製品/サービスをとりまとめ、体系立てて提案・構築する。