前回は、2011年度第3次補正予算~2012年度概算要求における官公庁・自治体分野の復興IT特需を解説した。2011年度第3次補正予算で正味2154億円のICT関連予算が組まれ、2011年度の当初政府ICT予算約8500億円からさらに25%も上乗せした。2012年度も概算要求(特別枠要望を含む)ベースでは40%もアップしており、まさに復興特需が到来した。日本経済が低迷するなかで恵まれた業界セグメントと言えよう。

 しかし復興特需はいつまでも続くわけではない。2013年度には復興関連予算は2012年度より減少するだろう。しかも、前回触れたように、財政健全化を意識した概算要求基準(シーリング)の下で、2012年度は従来型のICT関連予算が5%前後削減される可能性が高く、2013年度も同様な傾向が続く可能性が高い。そうした想定で営業戦略を立てる必要がある。

図1●政府のICT関連予算の予測(単位:億円)
図1●政府のICT関連予算の予測(単位:億円)

 幸い、2013年度以降も継続しそうなIT特需の芽が2011年度第3次補正予算~2012年度概算要求に見られる。3本柱となりそうなキーワードは「クラウド」「国民共通番号」「サイバー攻撃対策」だ。これらについて考察しよう。

息を吹き返す自治体クラウド

 自治体クラウドは2009年自民党麻生内閣の補正予算で初めて19億円と本格的な予算が組まれ、北海道、京都、佐賀県連合(佐賀県、大分県、宮崎県、徳島県)の3グループが2010年に実現した。

 自治体クラウドは、中央官庁や独立行政法人、自治体などで「レガシーマイグレーション」需要が終わりつつあったなかで、IT業界にとって期待の星だった。実際、既に大手ITベンダー各社は自治体の基幹業務をパッケージ化したクラウド・ソリューション(例えば日本電気のGPRIME for SaaS、日立製作所のSUSINAD、富士通のINTERCOMMUNITY21)を持ち、先進的な自治体に導入が始まっている。

 ところが 政権交代時に民主党は自民党の政策を全面的に批判しクラウド予算を削った。しかも民主党政権のICT政策は総務省主導であったため、経済産業省が主導していたクラウドが目の敵にされた側面もある。

 そのクラウドが復興特需で確実に復活する。広域災害を意識すれば、クラウド・コンピューティングが有効なのは明らかだからだ。民間では既にクラウドは本格化しているが、中央官庁・自治体も遅ればせながらその時期を迎えることになる。これは、大きなクラウド予算項目としてあがるものだけでなく、自治体を中心に各々の新規システム導入に当たって自然に採用されていくだろう。

 そこで2011年度第3次補正予算と2012年度概算要求(特別枠要望を含む)のうち、項目名やその説明に「クラウド」と明記されているものをピックアップすると、約61億円であり、2011年度より8.5億円も減っている(図2)。

 図2●総務省と経済産業省のクラウド関連予算
図2●総務省と経済産業省のクラウド関連予算