プレゼンは、なかなか上達しないのが悩ましいもの。上達を阻む理由の一つが、「そんなこと自分はできる、できているはず」という願望を含めたプレゼンター本人の勘違いだ。逆に言えば、この勘違いに気づいて変えようとすれば、プレゼンはすぐに劇的に進化する。

 それを明らかにしたのが、復興をテーマに開催したアプリとアイデアのコンテスト「A3 Together」のファイナリスト10組の決勝プレゼンだ(関連記事「A3 Together 決勝プレゼン&表彰式レポート」)。決勝プレゼンの前日または当日朝、ファイナリストにリハーサルを兼ねてプレゼン特訓を受けてもらい、本番に臨んでもらった。その結果、リハーサルに同席した誰もが驚くくらい進化し、見事なプレゼンとなったのである。

 なお、リハーサルでプレゼンのコーチを引き受けてくれたのは、ベストセラー『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』に解説を寄稿したエバーノート日本法人の会長である外村仁氏と、A3 Togetherの発案者でもあるNTTドコモ スマートフォンコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室コンテンツ支援担当部長の山下哲也氏の二人だ(写真)。

写真●プレゼンのコーチをする山下哲也氏(左)と外村仁氏(右)
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 本連載では、外村氏と山下氏がリハーサルでどんなアドバイスをして、ファイナリストの方々が「ビフォア」「アフター」でどう変わり、どう進化したかを4回にわたってお伝えしたい。『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』の担当編集者がレポートする。

最後まで聞いてもどんなアプリかわからない

 今回のプレゼンで、リハーサルと本番とでプレゼンが最も大きく変わった一人が、アイデアプラントの石井力重氏だ。石井氏は、「笛モールスアプリ」というアプリのアイデアを発表した。リハーサルの1回目では、東日本大震災当日に携帯電話がつながらずに家族と連絡がつかない状況と、数百メートル先まで音が届く笛を使ったモールス信号で情報を伝えるというアイデアを中心に説明した。

 ところが、震災時の笛の有用性を強調するあまり、肝心のどんなアプリになるのか、アプリで何ができるのかといった基本的な仕組みがほとんど伝わらないプレゼンになってしまった。

 プレゼンに対して、コーチを務めた山下氏と外村氏は、次のようにアドバイスをした。

山下氏「最初にどんなアプリなのかを説明すべき」

外村氏「核となるメッセージは何か。通信が途絶えても、このアプリでスマートフォンを活用して連絡を取れることではないか」