スマートフォン本格導入に向けて重荷になりそうなのが、コストである。10台、20台なら月額料金は十数万円程度で済む可能性はあるが、数百台あるいは数千台ともなると数百万円規模になり、負担が大きくなる。億単位の年間コストである。

 大手企業の場合は、携帯電話事業者との契約が相対契約になり、個別に料金が設定されるケースもある。ただ、中小企業や導入台数が少ない契約になる場合は、法人向けの料金体系がそのまま適用される。継続的にスマートフォンを活用するためにも、初期費用や運用コストはできるだけ抑えたいところだ。

 スマートフォン導入に必要なコストは、端末購入費、アプリケーション購入費、データ通信費、通話費の、大きく四つに分けられる。それぞれにコスト削減の余地がある(図1)。特に通話費は、IP電話がスマートフォンでも利用可能になったことで、大きなコスト削減効果が見込めそうだ。

図1●スマートフォン/タブレット端末導入に必要な主なコストと動向
図1●スマートフォン/タブレット端末導入に必要な主なコストと動向
四つのコストは方法次第で抑制することが可能である。

アプリは法人向け料金体系が登場

 まず端末の購入費である。最新モデルはプロセッサが高性能でメモリー容量も多く、使い勝手はよい。ただ、想定業務で十分なスペックを備えていれば、旧タイプの機種でも十分。選定する機種次第では、端末購入費をゼロに抑えることも可能だ。新機種が次々と投入されている状況を考慮すれば、業務に適した端末を割安で購入できる。

 アプリケーションについては、法人向けの料金体系を用意する製品が登場している。例えばエフセキュアのセキュリティソフト「モバイル セキュリティ」であれば、個人向けが年間1台当たり3500円なのに対して、法人向けライセンスであれば台数次第で3000円以下にできる。業務で正式に導入するアプリケーションが決まっているなら、販売元に確認するべきだろう。

 データ通信や通話の料金については、MVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスやIP電話サービスを利用することで抑えられる。例えば日本通信のSIMカードを使うことで、NTTドコモのデータ通信網を月額2500円程度で利用できる。今後スマートフォンを本格的に導入する企業は、一考の余地がある。

 特にIP電話サービスは、今年に入って相次ぎ新サービスが登場し、使いやすくなった。NTTコミュニケーションズ、アールストリーム、ソフィアモバイル、日本通信などがサービスを提供済みである。

 通話相手によっては通話料が無料になるケースもあるため、大きなコスト削減効果が期待できる。NTTコミュニケーションズのiPhone向けサービス「050 plus」やソフィアモバイルの「エスモビ」がそうだ。社員同士の通話が、いつでも無料になる。通常の国内通話や、国際電話も割安だ。

 使い方は、スマートフォンで通常電話をかける操作とほとんど変わらない。IP電話サービスが提供する専用アプリケーションを起動し、相手の電話番号を押すだけだ。スマートフォンのアドレス帳はそのまま使える。