この特集では,過去に日経NETWORKに掲載したトラブル事例記事およびトラブル関連の特集記事から「3ナイ」トラブルを選び,その厄介さを説明した。最後に,過去78回のトラブル事例記事中に「3ナイ」トラブルがどの程度あったかと,それぞれの「ナイ!」が原因のトラブルは解決までにどれくらいの時間がかかるかについて調べてみた。

「3ナイ」トラブルは全体のおよそ4割

 図1左を見てほしい。これはトラブル事例記事中で紹介したトラブルを,原因別に分類したものだ。

図1●トラブルの原因と解決までの時間
図1●トラブルの原因と解決までの時間
上の円グラフは,日経NETWORKの2002年10月号から2009年10月号までの「トラブルからの脱出」で紹介したトラブルを原因別に分けてそれぞれの割合を示したものだ。毎年実施しているトラブル・アンケートの特集を掲載した号は同記事を休んでいるので,事例記事としての掲載は合計で78回ある。一つの記事で異なる原因のトラブルをまとめてしまっている回もあるが,上の表ではトラブルの原因が異なる場合は別々にカウントしている。そのため,合計で90例となっている。
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 20%を占める「その他」を除くと,「再現できナイ!」が16%で1位,「悪気がナイ!」が15%で2位になっている。3位は「機器が不安定」で12%,4位は「機器の故障」で11%,そして5位が「聞いてナイ!」で10%となっている。3位,4位の機器の問題はわかりやすい原因だ。それに対して「3ナイ」トラブルはこの特集で示したように厄介だ。それら三つを合わせると41%に上る。

 「再現できナイ!」がこれほど多いとは,今回調べてみるまではわからなかった。「聞いてナイ!」,「悪気がナイ!」などと重なるケースも多く見られたが,そのような場合はより適切と思われる「ナイ!」に分類している。それでも1位なのである。厄介なトラブルに付き合っている当事者の多さに驚かされた。

 「悪気がナイ!」は,逆にもっと多いと予想していた。というのも,毎年実施しているトラブル・アンケートの回答でここ数年多く見られる原因が,ケーブルのループ接続だったからだ。日常ありがちなトラブルの原因だが,事例記事にはあまり登場していなかった。事例記事はさまざまなパターンのトラブルを各号で掲載しようと考えており,結果としてループ接続ばかり続かないようにしたためだ。

 「聞いてナイ!」は,事例記事から読み解くのが難しい原因である。当事者の人間関係にもかかわることだからだ。取材や記事ではあらわにできていないだけで,実際にはもっと多いかもしれない。それでも,記事の端々から管理者の失望感や憤りが感じられた。

電源リセットで解決できるか?

 トラブル・アンケートの結果では,「電源のリセットで復旧した」という解決法は目立って多い。しかし,このケースはあまり掲載していない。単純なリセットという「措置」ではなく,当事者がどのように原因を追究するかという「知恵」を読者に紹介したいという思いからだ。

 だが,電源のリセットでトラブルを解決するという方法には異論もある。リセットすることでルーターのOSが設定ごと消えてしまったという事例もある。ネットワーク機器の電源リセットは,ある程度のリスクがあることを承知のうえで実施したほうがよさそうだ。

 意外と少ないのがマルウエアに感染したケース。「トラブルからの脱出」開始初期を除くと,近年は掲載例がほとんどない。取材対象者のセキュリティ意識が高くなっていることの表れかもしれない。