原子力や火力に替わる代替エネルギーの開発に異を唱える人はいないだろう。代替エネルギーの有力な候補は、太陽や風力による変動型電力である。莫大なエネルギーをもたらし得る変動型電力を電力系統に取り込むことは可能なのか。その際の問題点は何か。その問題はICT技術で解決可能なのだろうか。

 再生可能エネルギーにはいろいろな種類があるが、ここでは近未来に発電量が増加すると予想される太陽光と風力発電を取り上げる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、これらに加えてバイオマスを今後の再生エネルギーの重大なソースとしているが、バイオマスは変動型電源でないため性格が少し異なる。ここでは変動型の二つに注目する。

 これらの発電源で生成された電力を既存の電力系統に組み入れる際の問題点とその解決方法を解説する。前回、変動型再生可能エネルギー源である太陽と風は基幹電源になる要求を満たすのが困難だと述べたが、ICTの活用によって、この二つのエネルギー源が主電源となり得るかも議論する。

米国の動き

 まず米国での動きを見よう。北米電力信頼性協議会(NERC:North America Electric Reliability Council)は、太陽や風力になど変動型発電が将来急増することを見込み、これらの変動型発電を現在の電力系統に取り込みながら系統の安定運転を図るため、2007年12月にタスクフォースを設置した。2008年には、今後10年程度の間に14万5000Mワット程度の新たな変動型のグリーン電力が追加されると予想した。

 NERCは非政府・非営利会社であり、既存電力会社、独立系電力会社、州の規制機関、電力販売会社など、電力に関係するほとんどすべてのステークホールダーが参加している。北米の電力供給の安定化を図る使命を持っており、米連邦政府の一部である連邦エネルギー規制委員会(FERC:Federal Energy Regulatory Commission)およびカナダ政府の指導を受けている。カバーする地域が広く地域ごとに事情が異なるので、基本的な戦略や方針はNERCとして決定するが、地域を八つに分けて地域ごとの特殊事情も考慮している(図1)。八つの地域にはカナダとメキシコの一部も含む。

 米国では、西部相互接続、テキサス相互接続、東部相互接続という三つの送電網が存在する。こちらの記事で示された図1の地図と下記にある図1の地図を比較すると明らかなように、西部相互接続がカバーする領域はNERCのWECC地域と一致している。また、テキサス相互接続はTRE地域と一致している。NERCの残りの六つの地域は東部相互接続の地域と一致している。

図1●NERCの八つの地域
図1●NERCの八つの地域
出典:北米電力信頼性協議会