リクルートはプライベートクラウドの構築プロジェクトで、協力会社との壁を設けないチーム作りを推進した。毎日メールマガジンを発行するなど、情報共有にも工夫を凝らした。この施策は効果を発揮した。(文中敬称略)

 プロジェクトでの大場の施策は奏功した。技術者から積極的な提案が相次いだのだ。各グループ内では定期的にチーム横断の発表会を開いた。このため異なるチームのメンバー同士で、課題解決のアイデアが行き交うようになった。

課題解決のアイデアが飛び交う

 アイデアが成果に結びついた一例が、クラウドに必要な資源をサイトに割り当てる設定作業や運用作業の自動化である。当初の計画では、市販の運用管理ソフトを利用する予定だった。しかし市販ソフトを使っても、設定や運用に手作業の部分が残った。

 そこで構築工程に入り、作業の自動化を推し進める様々なアイデアを技術者が提案した。これらの案を基に、市販ソフトの一部機能に手を加えたほか、同ソフトと連携する自動化ツールを開発。ブラウザーから指示に従って情報を入力すると、システム構成に必要な機器やミドルウエアなどの設定を自動生成する機能を実現した。

 作業を指揮した水野は「自社に閉じたクラウド基盤としては、かなり高い水準で自動化が達成できたと思う」と自信を見せる。

大規模サイトは分割して移行

 2010年4月、サイトの移行作業に入った。現場で指揮したのは、システム基盤推進室インフラソリューショングループの菊地原拓だ。菊池原は「ぶどう」こと移行グループのリーダーを務める。

 移行グループは技術者が2~3人ごとに組になって、各サイトの移行作業を支援した。サイトの担当者との綿密な打ち合わせと合意が必要な、骨の折れる作業だ。

 大規模なサイトは特別チームを組織して対応した。SUUMOに関してはサイトの休止期間を作らないよう、機能を3分割して段階的に移行を進めた。50余りのサイトの移行に要したのは1年余り。この期間に、移行に伴うサイトの致命的な停止は1件もなかった。

 プロジェクトに対する高い評価は、移行完了後にサイト担当者を対象に実施したアンケート結果に表れている。5点満点で満足度は平均「3.9」を獲得した。

 菊地原は「サイトの担当者にとって、基盤は動いているのが当たり前なので、得票は3(普通)に集まりやすい。3.9は誇れる結果だ」と述懐する。