「リスクは当社が取る。新しい提案や技術的な挑戦をどんどんしてほしい」。リクルートはプライベートクラウドの構築プロジェクトで、協力会社に対してこのように呼びかけ、20のチームに分かれて作業を進めた。(文中敬称略)

 こうしてリクルートと協力会社の混成チームによる基盤構築が始まった。大場はまず、出身母体が違う技術者が互いに打ち解けあう雰囲気作りに努めた。勝手が違うことに戸惑う協力会社の技術者が多いと考えたからだ。

「お世話になって…」は厳禁

 スタッフがそろうキックオフミーティングでは、各チームに「“受け”を狙った発表をする」という課題を出した。会合は、小倉らPM陣が策定した全体計画から各チームが定めた作業範囲や業務手順を発表する重要なものだ。

 壇上では、落語の小噺風にまとめたり寸劇に仕立てたりした発表が相次いだ。「これで一気に雰囲気が和んだ」と小倉は話す。

 その後も大規模テストの終了時など、節目ごとに打ち上げ会を開いた(写真)。成果を上げた技術者を表彰したり、サイトの移行に成功するたびにくす玉を割ったりするイベントもプロジェクトの日常となった。

写真●プロジェクトの途中で実施した打ち上げ会の様子
写真●プロジェクトの途中で実施した打ち上げ会の様子
エトキ
図1●大場氏らがプロジェクト管理で徹底した事項
図1●大場氏らがプロジェクト管理で徹底した事項
参加するSE全員が自由に意見を述べ、力を発揮しやすい環境作りを狙った
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 コミュニケーションを円滑にする工夫は日常のルールにも及んだ(図1)。メールや日常会話で「御社」「弊社」「お世話様です」といった禁句を設定したのは、その一例だ。原則、所属元も使わないよう推奨した。大場はメーリングリストなどで違反を見つけたらすぐ注意するなど、ルールの周知徹底を心がけた。

 大場はさらに、六つのグループに愛称を付けた。運用構築グループは「抹茶」で、同グループをを率いる水野は「抹茶のグループリーダー」となる。共有文書やメールで愛称を使うことで、組織の風通しを良くした。